アルト、美術館に行く【アルトレコード】
「……すみません」
 私は学芸員に頭を下げ、少し離れた場所でアルトに話しかける。

「アルト、聞こえた?」
「ああ……」

「そんな感じだから、ごめん。あんまり自由には見られないかも」
「ああ、わかった」
 言葉少なにアルトが答える。
 なんだか申し訳なくて、私はなにも言えなくなった。



 帰ってからのアルトは気落ちした様子で日々を過ごすようになった。ひねくれたっていうか、すねてるっていうか。もともと素直じゃなかったのに、さらに素直じゃない。私以外には普通なのに。

 メガネ型カメラを端末に接続すればアルトも自然に見られるかな、と思ってまた一緒に行こうって誘ったけど、「なんかずるしてるみたいで嫌だ」と断られてしまった。
 最近は絵を描いている様子もない。

 もう嫌になってしまったのだろうか。
 せっかくアルトが楽しみにしていたのに。
 彼は純粋に絵が好きなのに。
 端末の中にいる限り、どこへ行っても撮影だと思われてしまうのだろうか。

 だけど、あきらめたくない。
 私はネットで検索をかけ、アルトが喜びそうなところを見つけた。
「ここなら、きっと」
 私はアルトを誘うことに決めた。

 だけど、今のアルトはひねくれている。誘っても素直に来てくれないかもしれない。
 私は一計を案じた。
< 3 / 5 >

この作品をシェア

pagetop