野いちご源氏物語 二三 初音(はつね)
玉葛の姫君は、十月に六条の院に引っ越していらっしゃったばかり。
まだ細々とした家具は整いきっていないけれど、よい雰囲気でお暮らしなの。
女童も上品で、女房たちがたくさんお仕えしている。
姫君ご本人もお美しい。
山吹色の晴れ着が華やかなお顔によくお似合いで、明るくきらきらとしていらっしゃる。
理想的な姫君よ。
よくご覧になると、九州でのご苦労のせいかお髪の先が細くなっているけれど、それもまたさわやかでよいの。
はっきりとした美人でいらっしゃるので、
<見つけ出せてよかった>
とあらためてお思いになる。
父親顔をしたままではいらっしゃれないのではないかしら。
源氏の君は玉葛の姫君のところへ頻繁にお越しになっている。
すっかりお顔を見慣れてしまったけれど、姫君はやはり打ち解けようとはなさらない。
それはそうよね、実の親子ではない奇妙なご関係だもの。
でもそんなご様子も、源氏の君のお心を刺激する。
「まだこちらにいらっしゃって三か月にもならないとは思えませんね。ずいぶん長くお世話してきたような気がします。遠慮なさらず春の町にも遊びにいらっしゃい。幼い姫がおりましてね、琴などを習っていますから、あなたもご一緒になさるとよい。噂好きな人はいませんから、心配いりませんよ」
父君らしくおっしゃるので、姫君も素直に、
「仰せのとおりにいたします」
とお返事なさる。
まだ細々とした家具は整いきっていないけれど、よい雰囲気でお暮らしなの。
女童も上品で、女房たちがたくさんお仕えしている。
姫君ご本人もお美しい。
山吹色の晴れ着が華やかなお顔によくお似合いで、明るくきらきらとしていらっしゃる。
理想的な姫君よ。
よくご覧になると、九州でのご苦労のせいかお髪の先が細くなっているけれど、それもまたさわやかでよいの。
はっきりとした美人でいらっしゃるので、
<見つけ出せてよかった>
とあらためてお思いになる。
父親顔をしたままではいらっしゃれないのではないかしら。
源氏の君は玉葛の姫君のところへ頻繁にお越しになっている。
すっかりお顔を見慣れてしまったけれど、姫君はやはり打ち解けようとはなさらない。
それはそうよね、実の親子ではない奇妙なご関係だもの。
でもそんなご様子も、源氏の君のお心を刺激する。
「まだこちらにいらっしゃって三か月にもならないとは思えませんね。ずいぶん長くお世話してきたような気がします。遠慮なさらず春の町にも遊びにいらっしゃい。幼い姫がおりましてね、琴などを習っていますから、あなたもご一緒になさるとよい。噂好きな人はいませんから、心配いりませんよ」
父君らしくおっしゃるので、姫君も素直に、
「仰せのとおりにいたします」
とお返事なさる。