甘い生活を夢見る私は、甘くない彼に甘やかされる

 ――レオン薬品工業。

 アメリカでは、有名な製薬会社。
 その事業は、業種を越え、多岐にわたるという話。

 そんな会社に――ウチは、どうして乗っ取られたんだろう。

 それは、ずっと、心の奥底に沈んでいて――でも、目を向けずに埋め続けていたもの。



「――お嬢様、増沢の言葉は信じられますでしょうか」

 増沢に、控えめにそう言われ、私は、顔を上げた。
「当然じゃない」
「――ならば、これからお話する事が、真実と信じていただけると思ってよろしいでしょうか」
「……それは……」

 ――増沢は、何を知っているんだろう。

 でも、今は、頭がゴチャゴチャしすぎて、きっと、何を言っても考えられない。

「……ゴメン、増沢。……自分でも、もう、何が何だかわかんない……」

「――……さようでございますか。……まあ、急な事でございましたから……」

 増沢はうなづくと、私の手を取る。
 珍しいその行動に、目を丸くして見上げれば、優しく微笑んで返された。

「――お嬢様、事実がどうであれ――お嬢様が日水様にお持ちになった感情は、真実と思って良いのではないでしょうか」

「……え……」

「今の今まで、お嬢様は、日水様のご事情を知らぬまま、接してきた訳でございますよね」

「……う、うん……」

 知っていたら――そもそも、今の会社に入ってはいない。

 うなづく私に、増沢は、軽く手を叩くと、そっと離した。

「――ならば、それは、日水様ご自身に対するお気持ちなのではないかと、増沢は、思います」

「……そ、それは……」

 ――何だか、丸め込まれているようで――でも、確かに、そうなんだろうとも思ってしまう。

 私自身が、美善さんを好きになったのは、これまでの積み重ねがあったからで――そこには、何の事情も挟むコトは無かったもの。

「……わかった……。――……でも……まだ、何にも整理がつかないの」

「それは、当然の事でございます。……お嬢様のタイミングで構いません。増沢が知っている限りの事を、お話いたしますので」

 私は、それにうなづくと、増沢は、静かに部屋を出て行った。


 ――……まだ……よく、わかんない。

 ――でも、美善さんは、今まで一言も、自分の環境の事は話していなかった。

 深いところは、ボカされるだけで――……。


 ――……もしかして……話したくなかったのかな……。


 事実を知らない今は、憶測でしかない。


 ――けれど、心のどこかで、彼を信じていたいと思っている自分がいた。

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