甘い生活を夢見る私は、甘くない彼に甘やかされる
その後、無事に、私は、匿ってもらっていた財産を取り戻した――けれど。
「お嬢様、本当によろしかったのですか」
「うん。――……私の親戚のせいで、ウチで働いていた人達が被った迷惑を考えたら……」
「……それと、相続は関係の無い事と思いますが」
「――でも、もう、寄付も終わっちゃったし」
取り戻した財産は、ほぼ、寄付するコトにした。
元々、無いものと思っていたんだし、働くコトを覚えた私にとって、それは、もう、足枷にしかならない気がしたから。
――もしかしたら、後悔する日が来るかもしれない。
けれど、今の私は、自分に相応のお金と暮らしがあれば、良いと思えるんだ。
それから、少しして、仕事から帰って来るなり美善さんが私に告げた。
「ちょっと、祖父さんに会ってくる」
「――え?」
玄関でジャケットを脱ぎながら、まるで、明日の予定を言うような空気に、キッチンでフライ返しを持った私は、目を丸くして返す。
「……ど、どういう、コト?……この前、縁を切るって……」
そして、慌ててコンロの火を止めると、美善さんの元に駆け寄った。
「まあ、その絡みだっつってたから、相続関係のいろいろだろ。向こうの弁護士と――親父や伯父さんとも会って話つける必要があるらしくてな」
けれど、あっさりと返され、拍子抜け。
「……だ、大丈夫なの……?」
私は、美善さんを見上げ、眉を下げる。
――……ご両親が離婚してから、一度も会っていない、お父さんに会うのだ。
彼の心境を思うと、不安がよぎる。
「――大丈夫かどうかはわからねぇけど……まあ、もう、いい年した大人だ。冷静に話せるんじゃねぇの」
そう言って、なだめるように、私の頬にキスを落とした。
「……ホント?」
「わからねぇよ。……会ってみねぇコトには」
「……そ、そうだけど……」
「ま、最後に、お前と結婚するって伝えてくるさ。写真、見せても構わねぇよな?」
「……い、良い……けど……」
長い間の確執があるはずなのに――そう思ったけれど、美善さんは、私を、ヒョイ、と、抱え上げ笑った。
「――これで、お前と、何を気にするでもなく結婚できる喜びの方が大きいからな。さっさと終わらせて帰って来るさ」
「……み、美善さん」
あまりにも、ストレートな言葉に、思わず赤くなる。
「――……けど、無理に見送りに来なくても良いからな」
「え」
照れ隠しに、何を言ってごまかそうか考えていたら、不意打ちでそう言われ、頭が真っ白になった。
――それって……来てほしくない、ってコト?
けれど、彼は、慌てて続ける。
「いや、お前――両親の事故があったじゃねぇか。……飛行機、見たくねぇかと思ったから……」
「――……美善さん……」
私は、一瞬だけ目を伏せると、緩々と首を振った。
そして、顔を上げる。
「――でも、美善さんを見送れない方が嫌。……だから、行くよ」
「――……そうか」
少しだけ、気まずそうに微笑むと、彼は、私の傷を癒すように何度もキスをくれた。
「お嬢様、本当によろしかったのですか」
「うん。――……私の親戚のせいで、ウチで働いていた人達が被った迷惑を考えたら……」
「……それと、相続は関係の無い事と思いますが」
「――でも、もう、寄付も終わっちゃったし」
取り戻した財産は、ほぼ、寄付するコトにした。
元々、無いものと思っていたんだし、働くコトを覚えた私にとって、それは、もう、足枷にしかならない気がしたから。
――もしかしたら、後悔する日が来るかもしれない。
けれど、今の私は、自分に相応のお金と暮らしがあれば、良いと思えるんだ。
それから、少しして、仕事から帰って来るなり美善さんが私に告げた。
「ちょっと、祖父さんに会ってくる」
「――え?」
玄関でジャケットを脱ぎながら、まるで、明日の予定を言うような空気に、キッチンでフライ返しを持った私は、目を丸くして返す。
「……ど、どういう、コト?……この前、縁を切るって……」
そして、慌ててコンロの火を止めると、美善さんの元に駆け寄った。
「まあ、その絡みだっつってたから、相続関係のいろいろだろ。向こうの弁護士と――親父や伯父さんとも会って話つける必要があるらしくてな」
けれど、あっさりと返され、拍子抜け。
「……だ、大丈夫なの……?」
私は、美善さんを見上げ、眉を下げる。
――……ご両親が離婚してから、一度も会っていない、お父さんに会うのだ。
彼の心境を思うと、不安がよぎる。
「――大丈夫かどうかはわからねぇけど……まあ、もう、いい年した大人だ。冷静に話せるんじゃねぇの」
そう言って、なだめるように、私の頬にキスを落とした。
「……ホント?」
「わからねぇよ。……会ってみねぇコトには」
「……そ、そうだけど……」
「ま、最後に、お前と結婚するって伝えてくるさ。写真、見せても構わねぇよな?」
「……い、良い……けど……」
長い間の確執があるはずなのに――そう思ったけれど、美善さんは、私を、ヒョイ、と、抱え上げ笑った。
「――これで、お前と、何を気にするでもなく結婚できる喜びの方が大きいからな。さっさと終わらせて帰って来るさ」
「……み、美善さん」
あまりにも、ストレートな言葉に、思わず赤くなる。
「――……けど、無理に見送りに来なくても良いからな」
「え」
照れ隠しに、何を言ってごまかそうか考えていたら、不意打ちでそう言われ、頭が真っ白になった。
――それって……来てほしくない、ってコト?
けれど、彼は、慌てて続ける。
「いや、お前――両親の事故があったじゃねぇか。……飛行機、見たくねぇかと思ったから……」
「――……美善さん……」
私は、一瞬だけ目を伏せると、緩々と首を振った。
そして、顔を上げる。
「――でも、美善さんを見送れない方が嫌。……だから、行くよ」
「――……そうか」
少しだけ、気まずそうに微笑むと、彼は、私の傷を癒すように何度もキスをくれた。