甘い生活を夢見る私は、甘くない彼に甘やかされる
「ヤダ、先輩、このラーメン美味しい!」
「だろ」
十分ほど列に並んで注文を終え、やって来たラーメンは見た目からして美味しそうだったが――食べてみたら、想像以上だった。
先ほどまでのしおれた心は、あっさりと復活してしまう。
――こんなに美味しいものを教えてくれるんだから――少なくとも、ただの後輩から、つま先くらいは出ているよね?
すると、先輩が、ジッと私の手元を見ているので、キョトンとしながら尋ねた。
「先輩、どうかしたんですか?」
「……いや、そっちは食った事無ぇな、と」
「じゃあ、一口いります?」
私があっさりと丼を差し出すと、先輩は、目を丸くし、気まずそうに視線を逸らした。
「先輩?」
「――……い、いや、いい。お前が頼んだんだ、お前が食え」
「でも、先輩のおごりじゃないですか」
「いいから。――オレは、次の時にでも頼む」
そう言って、咳払いをすると、お冷を口にする。
――そんなに、嫌なのかな……。
落ちていく気分のまま、チラリと先輩を見やれば――何だか、耳や首筋が赤い。
――……あれ?
「……先輩、何で、照れてるんですか?」
「――……うるせぇよ。……黙って食え」
「横暴」
顔を伏せつつ、自分のラーメンをすする先輩は――明らかに、照れている。
「……こ、恋人でも無ぇんだから、そういうのはやめておけ」
けれど、ごまかすようにそう言われ、私は、一瞬だけ固まった。
先輩の言葉ひとつで、心は浮き沈みが激しい。
こんな風に、私だけが振り回されるのは、悔しいけれど――
「……そ、それもそうですね。……すみません」
反論できる立場でも無いのは、わかっているから、何も言えない。
その事実が悲しくて、私は、ごまかすように箸を進めた。
お互いに、どこか、ぎこちなくなりながらも、完食。
食器を片づけ、先輩は大きな袋を三つ抱えた。
「――さて、と。ひとまず、コレでやってみるか」
「ハイ」
「あと、見たいモンは無いか」
「――えっと……」
私は、空を見つめ考えるが――そもそも、買えるような資金が無いのだ。
――……本当は、服を見たり、おしゃれなカフェとか行きたいけど……。
「まあ、今日の目的は、コレだからな。――また、今度だ」
「――え」
今度、と、当然のように言われ、私は顔を上げ、先輩を見つめた。
「……ンだよ」
その視線に気づくと、先輩は、少しだけ居心地悪そうに私を見下ろす。
「……いえ、その……また、今度……なんですね」
「おう」
先輩は、あっさりとうなづくと、一番大きな袋の持ち手を、肩にかけ直した。
「それじゃあ、帰るか」
「ハイ」
私は、一歩先を歩く先輩の、大きくて広い背中を見上げる。
「ん?どうかしたか?」
いぶかし気に振り返った先輩は、そう言って、私を見下ろす。
「――いいえ、何でもないですー」
私は、首を微かに振って、少しだけおどけて返した。
――……これが、ホントのデートだったら良いのに……。
――……ホントの、恋人だったら――……。
胸をよぎる痛みは、初めてで――。
――自分が、こんな風に、誰かを好きになる事があるとは、思わなかった。
「だろ」
十分ほど列に並んで注文を終え、やって来たラーメンは見た目からして美味しそうだったが――食べてみたら、想像以上だった。
先ほどまでのしおれた心は、あっさりと復活してしまう。
――こんなに美味しいものを教えてくれるんだから――少なくとも、ただの後輩から、つま先くらいは出ているよね?
すると、先輩が、ジッと私の手元を見ているので、キョトンとしながら尋ねた。
「先輩、どうかしたんですか?」
「……いや、そっちは食った事無ぇな、と」
「じゃあ、一口いります?」
私があっさりと丼を差し出すと、先輩は、目を丸くし、気まずそうに視線を逸らした。
「先輩?」
「――……い、いや、いい。お前が頼んだんだ、お前が食え」
「でも、先輩のおごりじゃないですか」
「いいから。――オレは、次の時にでも頼む」
そう言って、咳払いをすると、お冷を口にする。
――そんなに、嫌なのかな……。
落ちていく気分のまま、チラリと先輩を見やれば――何だか、耳や首筋が赤い。
――……あれ?
「……先輩、何で、照れてるんですか?」
「――……うるせぇよ。……黙って食え」
「横暴」
顔を伏せつつ、自分のラーメンをすする先輩は――明らかに、照れている。
「……こ、恋人でも無ぇんだから、そういうのはやめておけ」
けれど、ごまかすようにそう言われ、私は、一瞬だけ固まった。
先輩の言葉ひとつで、心は浮き沈みが激しい。
こんな風に、私だけが振り回されるのは、悔しいけれど――
「……そ、それもそうですね。……すみません」
反論できる立場でも無いのは、わかっているから、何も言えない。
その事実が悲しくて、私は、ごまかすように箸を進めた。
お互いに、どこか、ぎこちなくなりながらも、完食。
食器を片づけ、先輩は大きな袋を三つ抱えた。
「――さて、と。ひとまず、コレでやってみるか」
「ハイ」
「あと、見たいモンは無いか」
「――えっと……」
私は、空を見つめ考えるが――そもそも、買えるような資金が無いのだ。
――……本当は、服を見たり、おしゃれなカフェとか行きたいけど……。
「まあ、今日の目的は、コレだからな。――また、今度だ」
「――え」
今度、と、当然のように言われ、私は顔を上げ、先輩を見つめた。
「……ンだよ」
その視線に気づくと、先輩は、少しだけ居心地悪そうに私を見下ろす。
「……いえ、その……また、今度……なんですね」
「おう」
先輩は、あっさりとうなづくと、一番大きな袋の持ち手を、肩にかけ直した。
「それじゃあ、帰るか」
「ハイ」
私は、一歩先を歩く先輩の、大きくて広い背中を見上げる。
「ん?どうかしたか?」
いぶかし気に振り返った先輩は、そう言って、私を見下ろす。
「――いいえ、何でもないですー」
私は、首を微かに振って、少しだけおどけて返した。
――……これが、ホントのデートだったら良いのに……。
――……ホントの、恋人だったら――……。
胸をよぎる痛みは、初めてで――。
――自分が、こんな風に、誰かを好きになる事があるとは、思わなかった。