甘い生活を夢見る私は、甘くない彼に甘やかされる
「あー‼日水主任じゃないですかー!」
すると、フードコートを出たところで、後ろからそんな女性の声が聞こえ、二人で振り返る。
「おう、池之島、有明、殿岡。お前等も買い物か」
「あたし達は、服見に来たんですよー!」
まるで、私の存在など無いもののように、池之島さんは、日水先輩の隣にやって来ると、袋を見やる。
「主任は、何買ったんですか?」
「あ、ああ。ちょっと収納グッズ的なヤツをな」
「へぇー」
彼女は、至近距離まで先輩に寄ると、ニッコリと笑みを浮かべた。
「急ぎじゃなかったら、合流しません?あたし達、今度の合コンで着て行く服探してるんですけど、男性の意見も聞きたくてー」
私は、胸の中のモヤモヤしたものを押さえながら、先輩を見上げた。
まるで、私の存在なんて無いような扱いに、声を上げたくなったけれど――そんな特別な関係じゃないのだと、思い直す。
池之島さんは、先輩を見上げ、眉を下げる。
「ダメですかー?今度こそ、って、気合い入れてるんですけど、決まらなくって」
「主任、一緒に行きませんか?」
「助けると思って」
ダメ押しのように、有明さんと、殿岡さんが続ける。
――ダメって言いたい――けど――……。
「――あ、の」
私は、震える声で、彼女達に言った。
「――……わ、私、の買い物は、終わった……ので……」
「――あら、津雲田さん、いたの」
冷たい声音で池之島さんに言われ、私は、言葉に詰まった。
「……せ、先輩。私が、コレ、持って帰りますので……皆さんと――……」
「そうなの?悪いわね、津雲田さん」
上機嫌の彼女。視線を下げた私。
本当は、これからアパートに帰って、先輩と一緒に部屋を片付けて、料理も教えてもらって――。
そんな風に思っていた分、気分は沈む。
けれど、会社の同期だから、気を遣わないといけない。
特に、池之島さんは、先輩がお気に入りだし――私を目の敵にしているから、これ以上、余計な波風は立てたくない。
――お嬢様、もう、旦那様も奥様もいらっしゃらないのですから、お一人で他人と交流しなければならないのですよ。
アパートの部屋に引っ越した当日、増沢が念を押すように、私に言ったのだ。
これまでは、結局、必要最低限の事しか自分でやってこなかったから、世間一般の常識が、いまいちわかっていなかった。
だから――嫌な思いをした人達が、陰口をたたくのも、どこ吹く風とばかり。
自分で好きな様に生きてきたのだけれど。
――お一人だけでは、生きてはいけないのですよ。
――他の人と交流しなければ、生活はままなりません。
――少しずつでも良いのです。周りの人達と交流する事に慣れていってくださいませ。
でも――こんな時の正解は、増沢は、教えてくれなかった。
だから、今までの自分では考えられないほどに気を遣わないと、会社だって辞めなきゃいけなくなるかもしれない。
それは、致命的なんだから――。
私は、先輩から袋を奪おうと、手を伸ばす。
――が。
伸ばした私の手は、空を切った。
「せ、先輩?」
「何考えてんだ。持てる訳無ぇだろうが」
「で、でも……」
私は、チラリと池之島さんを見上げる。
すると、ジロリ、と、キツく見返され、条件反射のように、肩をすくめる。
「だ、大丈夫ですってば」
居心地の悪さを感じ、私は、先輩の袋を強引に奪おうとするが、あっさりと避けられた。
「先輩!」
「アホか、何キロあると思ってんだ」
「でも」
「――ああ、もう。帰るぞ、月見」
そう言って、引き下がらない私をあきれたように見やり、先輩は歩き出した。
「日水主任!」
「悪いな、お前等。これから、部屋の片付けなんだよ」
「え?」
「先輩!」
――そんな言い方、一緒に住んでいるみたいに思われるんじゃ……。
まるで、誤解されてほしいかの言い回しに、私はあせる。
「ひ、日水主任――津雲田さんは、良いって……」
「何で、オレの行動をコイツに決められねぇとなんだよ」
バッサリとそう言って、先輩は、私を、少し不機嫌そうに見下ろした。
「ホレ、月見、さっさとしろ。バスの時間無ぇんだから」
「え、せ、先輩!」
「日水主任!」
スタスタと歩き出す先輩を、私は、急いで追いかける。
途中、振り返って、池之島さん達に頭を下げると、キッと睨みつけられた。
けれど、今は、先輩を追いかける方が優先だ。
私は、駆け足で、数メートル先を行く先輩を追いかけたのだった。
すると、フードコートを出たところで、後ろからそんな女性の声が聞こえ、二人で振り返る。
「おう、池之島、有明、殿岡。お前等も買い物か」
「あたし達は、服見に来たんですよー!」
まるで、私の存在など無いもののように、池之島さんは、日水先輩の隣にやって来ると、袋を見やる。
「主任は、何買ったんですか?」
「あ、ああ。ちょっと収納グッズ的なヤツをな」
「へぇー」
彼女は、至近距離まで先輩に寄ると、ニッコリと笑みを浮かべた。
「急ぎじゃなかったら、合流しません?あたし達、今度の合コンで着て行く服探してるんですけど、男性の意見も聞きたくてー」
私は、胸の中のモヤモヤしたものを押さえながら、先輩を見上げた。
まるで、私の存在なんて無いような扱いに、声を上げたくなったけれど――そんな特別な関係じゃないのだと、思い直す。
池之島さんは、先輩を見上げ、眉を下げる。
「ダメですかー?今度こそ、って、気合い入れてるんですけど、決まらなくって」
「主任、一緒に行きませんか?」
「助けると思って」
ダメ押しのように、有明さんと、殿岡さんが続ける。
――ダメって言いたい――けど――……。
「――あ、の」
私は、震える声で、彼女達に言った。
「――……わ、私、の買い物は、終わった……ので……」
「――あら、津雲田さん、いたの」
冷たい声音で池之島さんに言われ、私は、言葉に詰まった。
「……せ、先輩。私が、コレ、持って帰りますので……皆さんと――……」
「そうなの?悪いわね、津雲田さん」
上機嫌の彼女。視線を下げた私。
本当は、これからアパートに帰って、先輩と一緒に部屋を片付けて、料理も教えてもらって――。
そんな風に思っていた分、気分は沈む。
けれど、会社の同期だから、気を遣わないといけない。
特に、池之島さんは、先輩がお気に入りだし――私を目の敵にしているから、これ以上、余計な波風は立てたくない。
――お嬢様、もう、旦那様も奥様もいらっしゃらないのですから、お一人で他人と交流しなければならないのですよ。
アパートの部屋に引っ越した当日、増沢が念を押すように、私に言ったのだ。
これまでは、結局、必要最低限の事しか自分でやってこなかったから、世間一般の常識が、いまいちわかっていなかった。
だから――嫌な思いをした人達が、陰口をたたくのも、どこ吹く風とばかり。
自分で好きな様に生きてきたのだけれど。
――お一人だけでは、生きてはいけないのですよ。
――他の人と交流しなければ、生活はままなりません。
――少しずつでも良いのです。周りの人達と交流する事に慣れていってくださいませ。
でも――こんな時の正解は、増沢は、教えてくれなかった。
だから、今までの自分では考えられないほどに気を遣わないと、会社だって辞めなきゃいけなくなるかもしれない。
それは、致命的なんだから――。
私は、先輩から袋を奪おうと、手を伸ばす。
――が。
伸ばした私の手は、空を切った。
「せ、先輩?」
「何考えてんだ。持てる訳無ぇだろうが」
「で、でも……」
私は、チラリと池之島さんを見上げる。
すると、ジロリ、と、キツく見返され、条件反射のように、肩をすくめる。
「だ、大丈夫ですってば」
居心地の悪さを感じ、私は、先輩の袋を強引に奪おうとするが、あっさりと避けられた。
「先輩!」
「アホか、何キロあると思ってんだ」
「でも」
「――ああ、もう。帰るぞ、月見」
そう言って、引き下がらない私をあきれたように見やり、先輩は歩き出した。
「日水主任!」
「悪いな、お前等。これから、部屋の片付けなんだよ」
「え?」
「先輩!」
――そんな言い方、一緒に住んでいるみたいに思われるんじゃ……。
まるで、誤解されてほしいかの言い回しに、私はあせる。
「ひ、日水主任――津雲田さんは、良いって……」
「何で、オレの行動をコイツに決められねぇとなんだよ」
バッサリとそう言って、先輩は、私を、少し不機嫌そうに見下ろした。
「ホレ、月見、さっさとしろ。バスの時間無ぇんだから」
「え、せ、先輩!」
「日水主任!」
スタスタと歩き出す先輩を、私は、急いで追いかける。
途中、振り返って、池之島さん達に頭を下げると、キッと睨みつけられた。
けれど、今は、先輩を追いかける方が優先だ。
私は、駆け足で、数メートル先を行く先輩を追いかけたのだった。