甘い生活を夢見る私は、甘くない彼に甘やかされる
何だかんだ言い合いながら、それでも、部屋の床に散らばっていた物たちは、ようやくケースに収まってくれた。
――まあ、今度は、そのケースに場所を取られてしまったけれど。
「――今日は、こんなモンか」
「……ですね。……疲れましたー」
今日は、本当に、アレコレ考える事が多すぎて、頭の中は、そろそろ停止状態に入りそうだ。
先輩は、大きく伸びをしようとし、一旦停止。
手を伸ばしたら、完全に、天井に届いてしまう。
その代わりに、首に手をやり、左右に傾げながら言った。
「じゃあ、後は、また、明日だな」
「え」
私が見上げれば、先輩は、当然のように言った。
「言っただろ。しばらく、週末来るって」
「え、で、でも、美善さんだって、お休みが……」
「オレの休みだ。どう使おうが、オレの自由だろ」
――それを、私に使ってくれるんだ。
そう思うと、胸が弾む。
「あ……ありがとうございます……」
「ああ、でも、執事のじいさんには、挨拶しておいた方が良いか。一応、”お嬢様”の部屋に、入り浸るようなモンだし」
「え、いえ、増沢には、私から言っておきますよ」
「そういう訳にはいかねぇだろ」
「い、良いですから!」
何だか、同棲するかのような言い方に聞こえてしまい、私は、慌てる。
それに、こんな状況――増沢が知ったら、何を言われるコトやら。
「でもよ」
「良いですってば‼」
「あのなぁ」
「もう!美善さんの、頑固者!」
「ハア⁉」
いつものような言い合いになりかけた瞬間、壁が、ドン、と、叩かれた。
私は、反射で肩をすくめる。
――ヤバイ。隣の人、怒ってる……?
恐る恐る先輩を見上げると、気まずそうな表情で見返された。
「……悪い」
「いえ……」
「一応、隣に謝りに行くか……」
「え」
私は先輩に聞き返す。
「――謝るって……何でですか?」
「何でって……さすがに、昨日の今日で、立て続けにうるさくしちまったんだし、詫びは入れておいた方が良いだろ」
「――……えぇー……何か、腑に落ちない……。こういうのって、お互い様じゃないですかー」
そりゃあ、うるさくしたのは、悪いと思うけれど――。
すると、複雑な表情の私をなだめるように、先輩は、優しく頭を撫でた。
「そういうモンだ。お互い様、って言うなら、ちゃんと顔見せて、どんなヤツが住んでいるか、知ってもらわねぇと」
「……個人情報……」
「――も、大事だが、それよりは、牽制しとかねぇとだからな」
「……牽制?」
キョトンとしたままの私に、先輩は、苦笑いを浮かべる。
「男が出入りしてるってだけで、充分、牽制になるモンだ」
「……意味、わかんないですー……」
「わからなくて良い」
更に腑に落ちない私をなだめながら、先輩は、ドアを開ける。
「――ホラ、来い、月見」
「……ハァイ……美善さん」
いつの間にか、お互い、名前で呼び合う事に慣れ始めたのか、最初のような照れが消えている。
その代わり――先輩の名前を呼ぶ度に、私の胸の中は、ギュウ、と、締めつけられるような痛みと、切ない温かさで埋め尽くされた。
――まあ、今度は、そのケースに場所を取られてしまったけれど。
「――今日は、こんなモンか」
「……ですね。……疲れましたー」
今日は、本当に、アレコレ考える事が多すぎて、頭の中は、そろそろ停止状態に入りそうだ。
先輩は、大きく伸びをしようとし、一旦停止。
手を伸ばしたら、完全に、天井に届いてしまう。
その代わりに、首に手をやり、左右に傾げながら言った。
「じゃあ、後は、また、明日だな」
「え」
私が見上げれば、先輩は、当然のように言った。
「言っただろ。しばらく、週末来るって」
「え、で、でも、美善さんだって、お休みが……」
「オレの休みだ。どう使おうが、オレの自由だろ」
――それを、私に使ってくれるんだ。
そう思うと、胸が弾む。
「あ……ありがとうございます……」
「ああ、でも、執事のじいさんには、挨拶しておいた方が良いか。一応、”お嬢様”の部屋に、入り浸るようなモンだし」
「え、いえ、増沢には、私から言っておきますよ」
「そういう訳にはいかねぇだろ」
「い、良いですから!」
何だか、同棲するかのような言い方に聞こえてしまい、私は、慌てる。
それに、こんな状況――増沢が知ったら、何を言われるコトやら。
「でもよ」
「良いですってば‼」
「あのなぁ」
「もう!美善さんの、頑固者!」
「ハア⁉」
いつものような言い合いになりかけた瞬間、壁が、ドン、と、叩かれた。
私は、反射で肩をすくめる。
――ヤバイ。隣の人、怒ってる……?
恐る恐る先輩を見上げると、気まずそうな表情で見返された。
「……悪い」
「いえ……」
「一応、隣に謝りに行くか……」
「え」
私は先輩に聞き返す。
「――謝るって……何でですか?」
「何でって……さすがに、昨日の今日で、立て続けにうるさくしちまったんだし、詫びは入れておいた方が良いだろ」
「――……えぇー……何か、腑に落ちない……。こういうのって、お互い様じゃないですかー」
そりゃあ、うるさくしたのは、悪いと思うけれど――。
すると、複雑な表情の私をなだめるように、先輩は、優しく頭を撫でた。
「そういうモンだ。お互い様、って言うなら、ちゃんと顔見せて、どんなヤツが住んでいるか、知ってもらわねぇと」
「……個人情報……」
「――も、大事だが、それよりは、牽制しとかねぇとだからな」
「……牽制?」
キョトンとしたままの私に、先輩は、苦笑いを浮かべる。
「男が出入りしてるってだけで、充分、牽制になるモンだ」
「……意味、わかんないですー……」
「わからなくて良い」
更に腑に落ちない私をなだめながら、先輩は、ドアを開ける。
「――ホラ、来い、月見」
「……ハァイ……美善さん」
いつの間にか、お互い、名前で呼び合う事に慣れ始めたのか、最初のような照れが消えている。
その代わり――先輩の名前を呼ぶ度に、私の胸の中は、ギュウ、と、締めつけられるような痛みと、切ない温かさで埋め尽くされた。