甘い生活を夢見る私は、甘くない彼に甘やかされる
最初、何を言われたのか、わからず、私は目を丸くするだけだった。
そんな私に、彼は、気まずそうに続けた。
「――あー……っと、彼氏?が、さっき挨拶来てたんだけど――」
「かっ……⁉――……あ‼」
彼氏、というワードに、一瞬、沸騰してしまうが、すぐに小康状態へ。
「……あ、あの……壁、叩いた人、ですか……?」
そう尋ねれば、彼も目を丸くし――そして、吹き出した。
「――あ、ああ、そうそう。悪かったね、ちょっと、睡眠不足でイライラしててさ」
「……い、いえ、あの……私の方こそ、うるさくして、すみませんでした……」
思ったよりも砕けた態度と、割と優しげな表情に、私は、少しだけ警戒を解いた。
そもそも、彼が怒ったのは、私がうるさくしたせいだもの。
「――まあ、気をつけてくれたら別に。オレ、ここで、割と夜とか深夜にシフト入ってるんで、アンタが帰ってる頃って寝てる時が多いんだよ」
「ハイ。気をつけます」
そう言って頭を下げると、彼は、クスクスと笑い出した。
私は、顔を上げ、眉を寄せる。
「あ、あの……?」
「いや、バカみたいに素直だな、アンタ」
――コレは……バカにされているの?褒められているの?
すると、彼は、苦笑いで手を上げた。
「いや、悪く取らないでくれたら。――そうだ、オレ、広神っての」
そう言いながら、彼――広神さんは、着けていた名札を私に向けた。
「あ、つ、津雲田、です……」
私は、名刺を取り出そうとしたが、会社の絡みでも無いし、と、考え直す。
「まあ、あんまり会う事も無いけど、一応」
「ハ、ハイ。よろしくお願いします」
「じゃあ、会計、良いかな」
「あ、ハイ。げ、現金、で……」
「りょーかい」
広神さんは、慣れた手つきでレジを操作し、私は、無事、会計を終えた。
「ありがとうございました」
「あ、ハ、ハイ」
思わず返してしまうと、彼は、笑いをこらえながら、片手を上げた。
――何だか……思っていたより、怖くなかったな……。
私は、少しだけ、安心する。
――自分一人で、見ず知らずの人と交流できた。
それが、何だかうれしくて――。
――……先輩に伝えたいな。
――ちゃんと、できました、って。
少しずつでも、進歩している。
そう思いたい。
――そして、それは、きっと、私を見放さずにいてくれた先輩と増沢のおかげ。
私は、ふと、足を止めた。
――……ヤダ。
――……いつの間にか、増沢よりも、先輩を先に思い出してた。
けれど――きっと、それが、好きだってコトなんだろうな――……。
そんな風に思いを巡らせながら部屋に帰り、ささやかな夕飯を終え、シャワーも洗濯も終了。
そして――
「――気兼ねなくベッドに入れるって、スゴイ……!」
思わず、手を組んで祈りたくなった。
いつもなら、投げっぱなしの服が布団の上を陣取っていて、それを払い落としてベッドに潜るのだ。
その作業が無いなんて、何て楽なんだろう。
――明日、先輩に伝えたいな。
こんな風に、気持ち良く眠るコトができました、って。
――……いつか……先輩と一緒に生活できたら、ステキだな……。
そんな夢のような思いを描きながら、私は、眠りについた。
そんな私に、彼は、気まずそうに続けた。
「――あー……っと、彼氏?が、さっき挨拶来てたんだけど――」
「かっ……⁉――……あ‼」
彼氏、というワードに、一瞬、沸騰してしまうが、すぐに小康状態へ。
「……あ、あの……壁、叩いた人、ですか……?」
そう尋ねれば、彼も目を丸くし――そして、吹き出した。
「――あ、ああ、そうそう。悪かったね、ちょっと、睡眠不足でイライラしててさ」
「……い、いえ、あの……私の方こそ、うるさくして、すみませんでした……」
思ったよりも砕けた態度と、割と優しげな表情に、私は、少しだけ警戒を解いた。
そもそも、彼が怒ったのは、私がうるさくしたせいだもの。
「――まあ、気をつけてくれたら別に。オレ、ここで、割と夜とか深夜にシフト入ってるんで、アンタが帰ってる頃って寝てる時が多いんだよ」
「ハイ。気をつけます」
そう言って頭を下げると、彼は、クスクスと笑い出した。
私は、顔を上げ、眉を寄せる。
「あ、あの……?」
「いや、バカみたいに素直だな、アンタ」
――コレは……バカにされているの?褒められているの?
すると、彼は、苦笑いで手を上げた。
「いや、悪く取らないでくれたら。――そうだ、オレ、広神っての」
そう言いながら、彼――広神さんは、着けていた名札を私に向けた。
「あ、つ、津雲田、です……」
私は、名刺を取り出そうとしたが、会社の絡みでも無いし、と、考え直す。
「まあ、あんまり会う事も無いけど、一応」
「ハ、ハイ。よろしくお願いします」
「じゃあ、会計、良いかな」
「あ、ハイ。げ、現金、で……」
「りょーかい」
広神さんは、慣れた手つきでレジを操作し、私は、無事、会計を終えた。
「ありがとうございました」
「あ、ハ、ハイ」
思わず返してしまうと、彼は、笑いをこらえながら、片手を上げた。
――何だか……思っていたより、怖くなかったな……。
私は、少しだけ、安心する。
――自分一人で、見ず知らずの人と交流できた。
それが、何だかうれしくて――。
――……先輩に伝えたいな。
――ちゃんと、できました、って。
少しずつでも、進歩している。
そう思いたい。
――そして、それは、きっと、私を見放さずにいてくれた先輩と増沢のおかげ。
私は、ふと、足を止めた。
――……ヤダ。
――……いつの間にか、増沢よりも、先輩を先に思い出してた。
けれど――きっと、それが、好きだってコトなんだろうな――……。
そんな風に思いを巡らせながら部屋に帰り、ささやかな夕飯を終え、シャワーも洗濯も終了。
そして――
「――気兼ねなくベッドに入れるって、スゴイ……!」
思わず、手を組んで祈りたくなった。
いつもなら、投げっぱなしの服が布団の上を陣取っていて、それを払い落としてベッドに潜るのだ。
その作業が無いなんて、何て楽なんだろう。
――明日、先輩に伝えたいな。
こんな風に、気持ち良く眠るコトができました、って。
――……いつか……先輩と一緒に生活できたら、ステキだな……。
そんな夢のような思いを描きながら、私は、眠りについた。