甘い生活を夢見る私は、甘くない彼に甘やかされる
LIFE.10
翌日――月曜日。
私は、緊張で身体をこわばらせながらも、総務部のドアを開ける。
「お……おはよう……ございます……」
始業十五分前。
部屋には、既に八割方揃っていて、その視線は一気に私に降りかかってきた。
チラチラと見定めるように眺められているのは――先週の飲み会のせいとしか思えない。
――あの時、総務部の半分以上は、私が日水先輩に抱き締められているところを、目撃しているのだから。
「おはよう、津雲田さん」
「おっ……は、よう……ござ、います……。池之島さん……」
自分の席に着くと、すぐに、隣から声がかけられ、私は完全に硬直。
けれど、引きつった顔をうつむかせ挨拶を返す。
何せ、彼女は、日水先輩がお気に入りだというのだ。
ただでさえ、私の存在を快く思っていないのに――フリとはいえ、彼女になってしまったものだから、まともに顔を見られる訳が無い。
「ねえ、津雲田さん。今日のお昼、一緒に食べない?」
すると、猫なで声でそう尋ねられ、私は、思わず池之島さんを見やる。
――あ。
「……う、うん……」
「ホント?良かった――」
ニッコリと笑う彼女の目は――どう考えても、笑ってはいない。
それにビクつきながらも、逃げるコトはできないのだろうと、あきらめ、私は、パソコンでメールを確認し始めたのだった。
そして、緊張しながらも、あっという間にお昼休み。
私は、コンビニで買ったサンドウィッチとペットボトルの紅茶を抱え、先を行く池之島さん達三人の後をついて行く。
いつも、この三人でいるコトが多いから、当たり前の景色だけれど――まるで、尋問されに行くような心境になってしまう。
「――それで、いつから日水先輩と付き合ってるの?」
それぞれ、お弁当を広げる中、世間話をするように、池之島さんが私に尋ねてきた。
「えっ……あ……その……」
「全然気づかなかったわぁ」
「だよね。ビックリしたもの。飲み会の後、あんな道のど真ん中で、抱き合ってるとか――」
「でも、平木が何かしてたじゃない?」
三者三様、言いたいコトを立て続けに言われ、目が回りそうだ。
何せ、友人というものなどいなかった私には、複数人と話すというコト自体、慣れていないのだから。
すると、会話という会話も成立しない中、池之島さんが、こちらをのぞき込んできたので、思わず背筋を伸ばしてしまった。
「――で?」
「えっ」
「いつから?」
「あ、そ、それは……その……」
私は、鋭くなった彼女の視線に、背中に冷たいものが流れていくのを感じ、身震いしてしまった。
――ていうか、そもそも、そんなコトまで、決めてないのに!
どうやって答えたら良いのか迷っていると、不意に、頭上から声がした。
私は、緊張で身体をこわばらせながらも、総務部のドアを開ける。
「お……おはよう……ございます……」
始業十五分前。
部屋には、既に八割方揃っていて、その視線は一気に私に降りかかってきた。
チラチラと見定めるように眺められているのは――先週の飲み会のせいとしか思えない。
――あの時、総務部の半分以上は、私が日水先輩に抱き締められているところを、目撃しているのだから。
「おはよう、津雲田さん」
「おっ……は、よう……ござ、います……。池之島さん……」
自分の席に着くと、すぐに、隣から声がかけられ、私は完全に硬直。
けれど、引きつった顔をうつむかせ挨拶を返す。
何せ、彼女は、日水先輩がお気に入りだというのだ。
ただでさえ、私の存在を快く思っていないのに――フリとはいえ、彼女になってしまったものだから、まともに顔を見られる訳が無い。
「ねえ、津雲田さん。今日のお昼、一緒に食べない?」
すると、猫なで声でそう尋ねられ、私は、思わず池之島さんを見やる。
――あ。
「……う、うん……」
「ホント?良かった――」
ニッコリと笑う彼女の目は――どう考えても、笑ってはいない。
それにビクつきながらも、逃げるコトはできないのだろうと、あきらめ、私は、パソコンでメールを確認し始めたのだった。
そして、緊張しながらも、あっという間にお昼休み。
私は、コンビニで買ったサンドウィッチとペットボトルの紅茶を抱え、先を行く池之島さん達三人の後をついて行く。
いつも、この三人でいるコトが多いから、当たり前の景色だけれど――まるで、尋問されに行くような心境になってしまう。
「――それで、いつから日水先輩と付き合ってるの?」
それぞれ、お弁当を広げる中、世間話をするように、池之島さんが私に尋ねてきた。
「えっ……あ……その……」
「全然気づかなかったわぁ」
「だよね。ビックリしたもの。飲み会の後、あんな道のど真ん中で、抱き合ってるとか――」
「でも、平木が何かしてたじゃない?」
三者三様、言いたいコトを立て続けに言われ、目が回りそうだ。
何せ、友人というものなどいなかった私には、複数人と話すというコト自体、慣れていないのだから。
すると、会話という会話も成立しない中、池之島さんが、こちらをのぞき込んできたので、思わず背筋を伸ばしてしまった。
「――で?」
「えっ」
「いつから?」
「あ、そ、それは……その……」
私は、鋭くなった彼女の視線に、背中に冷たいものが流れていくのを感じ、身震いしてしまった。
――ていうか、そもそも、そんなコトまで、決めてないのに!
どうやって答えたら良いのか迷っていると、不意に、頭上から声がした。