甘い生活を夢見る私は、甘くない彼に甘やかされる
LIFE.11
「これで――ラスト」
書類倉庫は、部屋の片隅に会議室で使うような長机が設置してあり、そこで作業できるようになっている。
ようやく、最後の一枚を分け終え、私は大きく伸びをした。
あまりの量に、時間の感覚も無くなりつつあるけれど、時計など持っていないし、スマホはデスクの引き出しの中にある。
「で、これから、ファイリング……かあ……」
ため息交じりに、そうつぶやいてしまうのは、長机一杯に広がっている山にげんなりしてしまっているから。
中身は、各部署の書類や、申請書類――。
――……何で、こんなに溜まってるんだろうなぁ……。
先輩から頼まれたって、池之島さんは言ってたけど――……何だか、らしくないな……。
いつもなら、決裁書類のようなものは、すぐに処理されて片付けているはずなのに……。
――もしかして、私のせいで、いろいろ滞っていたのかな……。
そんな思いが回るけれど、ここで疑問に思っていたら動けない。
私は、部屋いっぱいに置かれているラックから、それぞれのファイルを探そうと目を凝らすが――何せ、天井近くまであるので、良く見えない。
電気はついているけれど、先輩くらいの身長でないと、きっと判別できないだろう。
そう思いながら、部屋を見回せば、入り口側の壁に脚立が立てかけてあったので、私は、それを手に取った。
「えっと……コレ……広げる……の??」
何せ、使ったコトも無い代物。
増沢が高いところの掃除をしていた時に、下の方を広げていたのを思い出し、ゆっくりと力を入れた。
「……よいしょ、っと……」
ギ、ギ、と、嫌なきしみを響かせ、脚立の足が開いていく。
――もしかして……そんなに、使ってないのかしら……?
そうは思っても、私には必要なので、目ぼしをつけた辺りに設置し、一段目に足をかける。
「……コレ……大丈夫、よね……」
不安に思いながらも、階段を上る要領で足を上げていく。
そして――三段目。
不意に下に視線が向いてしまい、その高さに、ひゅ、と、息をのんだ。
高所恐怖症では無かったはず――だったけれど。
両親が死んだのは、飛行機が落ちたから。
――高い所は、死と直結する。
その恐怖は、私の奥底に、確実に刻まれていた。
「――……っ……っ……!!!」
声にならない叫びを上げ、かぶりを振る。
たかが、脚立の三段目。
でも――私にとっては、パニックになるのに十分で。
そして、バランスを崩した私は――そのまま脚立ごと床に倒れ、意識は飛び去っていったのだった。
書類倉庫は、部屋の片隅に会議室で使うような長机が設置してあり、そこで作業できるようになっている。
ようやく、最後の一枚を分け終え、私は大きく伸びをした。
あまりの量に、時間の感覚も無くなりつつあるけれど、時計など持っていないし、スマホはデスクの引き出しの中にある。
「で、これから、ファイリング……かあ……」
ため息交じりに、そうつぶやいてしまうのは、長机一杯に広がっている山にげんなりしてしまっているから。
中身は、各部署の書類や、申請書類――。
――……何で、こんなに溜まってるんだろうなぁ……。
先輩から頼まれたって、池之島さんは言ってたけど――……何だか、らしくないな……。
いつもなら、決裁書類のようなものは、すぐに処理されて片付けているはずなのに……。
――もしかして、私のせいで、いろいろ滞っていたのかな……。
そんな思いが回るけれど、ここで疑問に思っていたら動けない。
私は、部屋いっぱいに置かれているラックから、それぞれのファイルを探そうと目を凝らすが――何せ、天井近くまであるので、良く見えない。
電気はついているけれど、先輩くらいの身長でないと、きっと判別できないだろう。
そう思いながら、部屋を見回せば、入り口側の壁に脚立が立てかけてあったので、私は、それを手に取った。
「えっと……コレ……広げる……の??」
何せ、使ったコトも無い代物。
増沢が高いところの掃除をしていた時に、下の方を広げていたのを思い出し、ゆっくりと力を入れた。
「……よいしょ、っと……」
ギ、ギ、と、嫌なきしみを響かせ、脚立の足が開いていく。
――もしかして……そんなに、使ってないのかしら……?
そうは思っても、私には必要なので、目ぼしをつけた辺りに設置し、一段目に足をかける。
「……コレ……大丈夫、よね……」
不安に思いながらも、階段を上る要領で足を上げていく。
そして――三段目。
不意に下に視線が向いてしまい、その高さに、ひゅ、と、息をのんだ。
高所恐怖症では無かったはず――だったけれど。
両親が死んだのは、飛行機が落ちたから。
――高い所は、死と直結する。
その恐怖は、私の奥底に、確実に刻まれていた。
「――……っ……っ……!!!」
声にならない叫びを上げ、かぶりを振る。
たかが、脚立の三段目。
でも――私にとっては、パニックになるのに十分で。
そして、バランスを崩した私は――そのまま脚立ごと床に倒れ、意識は飛び去っていったのだった。