甘い生活を夢見る私は、甘くない彼に甘やかされる
「――じゃあ、寝るか」
もう、深夜になっているので、二人で休むコトにした――けれど。
あっさりと先輩に言われ、私は、その場で硬直する。
――……そ、その言い方は、ちょっとっ……!!!
ガチガチになっている私を見やると、先輩は、バツが悪そうに頭をかいた。
「あー、いや、お前がベッドルーム使え。オレはリビングで布団敷くから」
「え」
「一応、来客用に一式はあるから、気にするな」
「で、でも」
こういう時は、私が床で寝るべきでは……。
そう言おうとしたが、先輩は、さっさとベッドルームに入って行く。
「あ、先輩、待って!」
「いいから、さっさと寝ろ」
「でも!」
私は、急いで追いかけ――我に返った。
――いや、ちょっと、待って!
――……ここで――先輩が寝起きしてる訳、だよね。
そう思うと、ドアのところで足が止まってしまった。
「月見?」
「えっ、あっ……そのぉ……ホントに、私が、ココ使うんですかぁ?」
その問いかけに、先輩は、顔をしかめた。
「何だ、そりゃあ?」
「い、いえ、その……私、ゆ、床で構わないんですけど……」
「あのなぁ……一応、ケガ人だろうが」
「でも、先輩の部屋なのに」
「だから――」
先輩は、言葉を切ると、ドスドスと、私の方へ向かってきた。
「……先輩?」
「――じゃあ、一緒に寝るか」
「……へ????」
――今、何て???
けれど、硬直している私を見やり、先輩は鼻で笑った。
「バカ、本気にするな」
「――っ……!!!」
真っ赤になって、口をあんぐりと開けた私に、先輩は、クローゼットを開けると、何かを放り投げてきた。
思わず両手で受け取れば――。
「……パジャマなんてモンは無ぇんだ。Tシャツで我慢しろ」
「……え」
私は、目を丸くすると、手に持っている布をまじまじと見つめる。
――…コ……コレは、まさか、”彼シャツ”というものではっ……!!?
先輩は、そんな私を見やり、あきれたように言った。
「そのまま寝たら、シワになるだろうが。――アイロンの技術は無いんだろ、お前?」