甘い生活を夢見る私は、甘くない彼に甘やかされる
「月見、起きろ。そろそろ、ヤベェぞ」
「――え」
身体を軽く揺すられ、目を開ける。
「――……っ、せっ、せんっ……」
すると、至近距離に、まあまあ端正な先輩の顔が見え、私は、うろたえる。
――あれ?私――……。
いまいち、自分の状況を把握しきれないまま起き上がると、先輩が、あきれたように私に言った。
「大して寝られなかっただろうが、今日はまだ、平日だ。一応、昨日の件は、労災扱いにしてもらうから」
「――え」
「それより、気分はどうだ?頭打ってるんだ。時間差で症状が出るコトもあるからな」
「あ、いえ、だ、大丈夫……で、す……」
「本当だな?」
心配そうにのぞき込まれ、心臓は、朝っぱらから元気に脈打つ。
「ほ、ホント、ですぅ!」
ジッと見つめられ、恥ずかしさで半泣きで答えると、先輩は、髪をそっと撫で、立ち上がる。
つられるように、ベッドの上から見上げると――本当に、天井は高かった。
先輩が立ち上がっても、まだ、距離があるのだ。
――というコトは――やっぱり、相当良い部屋なんじゃ……。
「月見、ひとまず、部屋まで送るから、ちゃんと支度して来い。後、昨日の今日だ、走って来るなよ」
「……先輩……何か、口うるさいオバサンみたい……」
「――は?」
あまりに立て続けに言われ、私は、口を滑らせる。
先輩は、眉をしかめ、見下ろしてきた。
「……そろそろ、本気で教育するかな……」
「え?」
――今まで、私、教育されてなかったワケ??
キョトンと見上げると、先輩は、私の髪を左耳にかける。
そして、そのまま、すうっと、撫でた。
「ひゃああっ……あっ……」
昨夜のような、全身を何かが走り抜ける感覚に、私は声を上げる。
「――お前、耳、弱いよな」
言いながら、先輩は、ベッドの隅に腰を下ろすが、手はまだ、撫で続けている。
「あ、や……や、めて……先輩……」
身体が金縛りにあったように動けない。
でも――内側は、どんどん熱くなってくる。
「や、めてぇ……み、美善、さ、ん……」
涙目で見上げて懇願するが、真っ直ぐ射貫かれるような視線に、言葉を飲み込んだ。
――……コレが、”教育”?
すると、先輩は、ハアアア、と、大きく息を吐き、背を向けて立ち上がった。
その反動で、ベッドが浮き上がる感覚。
私は、顔を上げると、その大きな背中を見つめる。
「……美善、さん?」
「――……悪い。……さすがに、調子に乗った」
「え?」
「っつーか……最近、理性が緩いな。……お前も嫌なら、抵抗しろよ」
――嫌?
――……嫌なワケ、無い!
私は、ベッドから下りると、先輩の前に回り込んだ。
「――月見」
「わ、私……そんな風に思ったコト、無いっ……」
「……え」
目を丸くする先輩は、私を見下ろすと、すぐに視線を逸らす。
それが――何だか、とても悲しくて、先輩の手を握った。
「お、おい」
「――すっ……好きな人に触られるんだから……う、うれしいに決まってるじゃないっ……!」
思わず叫んで――次の瞬間、空気が凍った気がした。
私は、自分が言った言葉を反芻し――徐々に赤くなっていき、声にならない叫びを上げる。
――ウソ、ウソ!
――私、何、口滑らせてるの⁉
「……あー……っと……」
けれど――先輩の困ったような、戸惑ったような口調に、胸がきしむ。
――……ああ、そっか。
――……フリ、だもんね。
にじんできた涙をこすると、私は、先輩の背中を押す。
ビクともしないけれど、それでも――力いっぱい。
「きっ……着替え、ますっ!」
――もう、先輩の顔が見られない。
「……おう」
うつむいて、ドアが閉まる音を待つ。
バタン、と、聞こえたタイミングで――涙があふれた。
――……何で……言っちゃったんだろ……。
あんな風に困った表情で、すべてを悟ってしまった。
――結局、私は、先輩にとって、手のかかる後輩で――。
――恋人同士なんてものは、ただの、フリで――……。
私の気持ちは、先輩にとっては、迷惑でしかなかったんだろう……。
「――え」
身体を軽く揺すられ、目を開ける。
「――……っ、せっ、せんっ……」
すると、至近距離に、まあまあ端正な先輩の顔が見え、私は、うろたえる。
――あれ?私――……。
いまいち、自分の状況を把握しきれないまま起き上がると、先輩が、あきれたように私に言った。
「大して寝られなかっただろうが、今日はまだ、平日だ。一応、昨日の件は、労災扱いにしてもらうから」
「――え」
「それより、気分はどうだ?頭打ってるんだ。時間差で症状が出るコトもあるからな」
「あ、いえ、だ、大丈夫……で、す……」
「本当だな?」
心配そうにのぞき込まれ、心臓は、朝っぱらから元気に脈打つ。
「ほ、ホント、ですぅ!」
ジッと見つめられ、恥ずかしさで半泣きで答えると、先輩は、髪をそっと撫で、立ち上がる。
つられるように、ベッドの上から見上げると――本当に、天井は高かった。
先輩が立ち上がっても、まだ、距離があるのだ。
――というコトは――やっぱり、相当良い部屋なんじゃ……。
「月見、ひとまず、部屋まで送るから、ちゃんと支度して来い。後、昨日の今日だ、走って来るなよ」
「……先輩……何か、口うるさいオバサンみたい……」
「――は?」
あまりに立て続けに言われ、私は、口を滑らせる。
先輩は、眉をしかめ、見下ろしてきた。
「……そろそろ、本気で教育するかな……」
「え?」
――今まで、私、教育されてなかったワケ??
キョトンと見上げると、先輩は、私の髪を左耳にかける。
そして、そのまま、すうっと、撫でた。
「ひゃああっ……あっ……」
昨夜のような、全身を何かが走り抜ける感覚に、私は声を上げる。
「――お前、耳、弱いよな」
言いながら、先輩は、ベッドの隅に腰を下ろすが、手はまだ、撫で続けている。
「あ、や……や、めて……先輩……」
身体が金縛りにあったように動けない。
でも――内側は、どんどん熱くなってくる。
「や、めてぇ……み、美善、さ、ん……」
涙目で見上げて懇願するが、真っ直ぐ射貫かれるような視線に、言葉を飲み込んだ。
――……コレが、”教育”?
すると、先輩は、ハアアア、と、大きく息を吐き、背を向けて立ち上がった。
その反動で、ベッドが浮き上がる感覚。
私は、顔を上げると、その大きな背中を見つめる。
「……美善、さん?」
「――……悪い。……さすがに、調子に乗った」
「え?」
「っつーか……最近、理性が緩いな。……お前も嫌なら、抵抗しろよ」
――嫌?
――……嫌なワケ、無い!
私は、ベッドから下りると、先輩の前に回り込んだ。
「――月見」
「わ、私……そんな風に思ったコト、無いっ……」
「……え」
目を丸くする先輩は、私を見下ろすと、すぐに視線を逸らす。
それが――何だか、とても悲しくて、先輩の手を握った。
「お、おい」
「――すっ……好きな人に触られるんだから……う、うれしいに決まってるじゃないっ……!」
思わず叫んで――次の瞬間、空気が凍った気がした。
私は、自分が言った言葉を反芻し――徐々に赤くなっていき、声にならない叫びを上げる。
――ウソ、ウソ!
――私、何、口滑らせてるの⁉
「……あー……っと……」
けれど――先輩の困ったような、戸惑ったような口調に、胸がきしむ。
――……ああ、そっか。
――……フリ、だもんね。
にじんできた涙をこすると、私は、先輩の背中を押す。
ビクともしないけれど、それでも――力いっぱい。
「きっ……着替え、ますっ!」
――もう、先輩の顔が見られない。
「……おう」
うつむいて、ドアが閉まる音を待つ。
バタン、と、聞こえたタイミングで――涙があふれた。
――……何で……言っちゃったんだろ……。
あんな風に困った表情で、すべてを悟ってしまった。
――結局、私は、先輩にとって、手のかかる後輩で――。
――恋人同士なんてものは、ただの、フリで――……。
私の気持ちは、先輩にとっては、迷惑でしかなかったんだろう……。