甘い生活を夢見る私は、甘くない彼に甘やかされる
LIFE.14
それから、十五分ほどロッカールームに隠れた私は、目を冷やし、どうにか見られそうな顔で総務部に戻った。
先輩は、既にパソコンと睨み合っているので、ほんの少しだけホッとしてしまう。
そして、こっそり――とまではいかないけれど、静かに席に着くと、スリープ状態だったパソコンの画面を戻した。
すると、先輩から、私宛てに社内メールの表示。
――本日、業務終了後、連絡事項の確認あり。
――退勤後、速やかにこちらまで。
――日水。
――……退勤、後?
私は、眉を寄せ、チラリ、と、先輩を見やる。
けれど、パソコンから視線を動かす事も無く作業をしているので、私は、メールを消去し、自分の仕事を再開した。
今日は、思っていたよりも仕事が少なかったので、定時で上がれると、ほんの少しだけ浮かれ――そして、一気に沈んだ。
――……業務連絡って……何だろう……。
でも、もしかしたら、労災の関係かな。
それか――辞めるコトについての説明かな……。
いずれにせよ、行かなきゃならないのは確か。
――無視して帰ったら――たぶん、明日以降、更に気まずい。
――でも……平気な顔していられるはずもないから、逃げてしまいたい。
そんなコトを考えていたら、どんどん憂鬱になる。
すると、目の前に、先ほど出したはずの書類が差し出された。
「え」
顔を上げれば、先輩が、無表情のまま、私のデスクにそれを置く。
「やり直し。――お前は日本人じゃないのか」
「は?」
「誤字脱字どころか、日本語が成立していないんだが」
「は⁉ウソ!」
「言葉遣い!」
「すみません!」
周囲の失笑に縮こまってしまうけれど――先輩を見上げれば、いつもと同じ雰囲気。
――ああ、コレが、平気になるってコトか。
どんなに辛くても、悲しくても、気まずくても、取り繕って――いつか、本当に平気になるんだろうか。
私の――あの気持ちは、無かったコトになるんだろうか――。
そう思ったら、急に悲しくなってきた。
「……すぐ、直します……」
「今日中」
「わかりました……」
両手で書類を持ち、いくつも付箋のついた箇所を修正していく。
何だかんだやっていたら、それだけで三十分かかってしまい、やはり、定時は過ぎてしまった。
私は、出来上がった書類を先輩のところまで持って行く。
「……お待たせしました……」
「おう。じゃあ、上がれ。――で、帰り支度したら、戻って来い」
「――え」
戸惑いを見せると、ジロリ、と、見上げられる。
「メールは確認したのか」
「――……ハイ」
「なら、逃げるなよ」
「……でも……」
「――……そんなんじゃ、仕事に影響するだろ」
「……すみません」
先輩は、書類を一通り眺めると、ファイルに挟み、席の後ろの棚に片付ける。
「じゃあ――」
そして、何かを言いかけたが、私は聞くのが怖くて頭を下げた。
「す、すみません!――今日は……た、たぶん、増沢が来そうなんでっ……!」
「え」
そう言うが遅い、ダッシュで総務部を飛び出した。
先輩は、既にパソコンと睨み合っているので、ほんの少しだけホッとしてしまう。
そして、こっそり――とまではいかないけれど、静かに席に着くと、スリープ状態だったパソコンの画面を戻した。
すると、先輩から、私宛てに社内メールの表示。
――本日、業務終了後、連絡事項の確認あり。
――退勤後、速やかにこちらまで。
――日水。
――……退勤、後?
私は、眉を寄せ、チラリ、と、先輩を見やる。
けれど、パソコンから視線を動かす事も無く作業をしているので、私は、メールを消去し、自分の仕事を再開した。
今日は、思っていたよりも仕事が少なかったので、定時で上がれると、ほんの少しだけ浮かれ――そして、一気に沈んだ。
――……業務連絡って……何だろう……。
でも、もしかしたら、労災の関係かな。
それか――辞めるコトについての説明かな……。
いずれにせよ、行かなきゃならないのは確か。
――無視して帰ったら――たぶん、明日以降、更に気まずい。
――でも……平気な顔していられるはずもないから、逃げてしまいたい。
そんなコトを考えていたら、どんどん憂鬱になる。
すると、目の前に、先ほど出したはずの書類が差し出された。
「え」
顔を上げれば、先輩が、無表情のまま、私のデスクにそれを置く。
「やり直し。――お前は日本人じゃないのか」
「は?」
「誤字脱字どころか、日本語が成立していないんだが」
「は⁉ウソ!」
「言葉遣い!」
「すみません!」
周囲の失笑に縮こまってしまうけれど――先輩を見上げれば、いつもと同じ雰囲気。
――ああ、コレが、平気になるってコトか。
どんなに辛くても、悲しくても、気まずくても、取り繕って――いつか、本当に平気になるんだろうか。
私の――あの気持ちは、無かったコトになるんだろうか――。
そう思ったら、急に悲しくなってきた。
「……すぐ、直します……」
「今日中」
「わかりました……」
両手で書類を持ち、いくつも付箋のついた箇所を修正していく。
何だかんだやっていたら、それだけで三十分かかってしまい、やはり、定時は過ぎてしまった。
私は、出来上がった書類を先輩のところまで持って行く。
「……お待たせしました……」
「おう。じゃあ、上がれ。――で、帰り支度したら、戻って来い」
「――え」
戸惑いを見せると、ジロリ、と、見上げられる。
「メールは確認したのか」
「――……ハイ」
「なら、逃げるなよ」
「……でも……」
「――……そんなんじゃ、仕事に影響するだろ」
「……すみません」
先輩は、書類を一通り眺めると、ファイルに挟み、席の後ろの棚に片付ける。
「じゃあ――」
そして、何かを言いかけたが、私は聞くのが怖くて頭を下げた。
「す、すみません!――今日は……た、たぶん、増沢が来そうなんでっ……!」
「え」
そう言うが遅い、ダッシュで総務部を飛び出した。