甘い生活を夢見る私は、甘くない彼に甘やかされる
 それから、話題はあちこちにさまよい続け、頼んだカルボナーラを食べ終える頃には、何で一緒にご飯を食べているのか、忘れるくらいだった。

「――それで、ケンカの原因は?」

「え」

 先に食べ終わった平木くんにそう言われ、一瞬、何のコトかと思ったが、すぐに、先輩の困ったような表情がよみがえってしまい、顔が固まった。

「――あ……の……」

「……まあ、言える範囲で構わないけど」

 悩んでいるのに気づいたのか、彼は、フォローするように続ける。
「それに、恋人同士のアレコレが聞きたいワケじゃないし」
「え、じ、じゃあ、何で……」
「だって、困ってるようだったから」
「え」
 当然のように言われ、目を丸くする。
 最初が最初だっただけに、こんなコトを言う人だとは思わなかった。
 私は、少しだけ、ためらいがちに言う。

「……わ……私、ね。……た……たぶん……振られる……んだ……」

「――え」

 さすがに予想外だったようで、彼は、絶句する。
「……で、でも、聞きたくなくて……逃げちゃって……」
 付き合っている振りをしているコトは言えなくても、事情は間違っていないはず。
 少しの間の沈黙。
 それを見計らったように、お下げしてもよろしいでしょうか、と、店員がやって来て、グラスだけが残された。
「……え……っと、ま、まず、原因は何?津雲田さん、振られるようなコトしたの?」
「――……それは……」
 告白した、とは言えず、言葉を濁そうとするが、何も浮かばない。
 こんな時、どう言ったらいいのかわからず、口を閉じる。
「……まさか、浮気?」
「ち、違う」
「――じゃあ、結婚匂わせた?」
 私は、ブルブル、と、首を振る。

「……わ、私が……ダメな人間だったから……」

「は?」

「いろんなコトできなくて……先輩に頼り切って……。――……先輩、面倒見が良いから……」

「ああ、まあねぇ……」

 納得されてしまい、若干傷つく――が、本当のコトなので、続けた。

「だから……たぶん、恋愛的なヤツじゃなかったっていうか……」

「――……うーん……でも、オレのコト睨んだ時、そんな風じゃなかったけどなぁ……」

「でも――」

「オレさぁ、津雲田さんのコト、ウワサで聞いただけで誘ったんだけど――それが気に入らないって言ってたじゃん?」

「それは……」

 でも、それは――自分の部下が、そんな風に連れて行かれるのが、我慢ならなかっただけなんだと思う。
 あの時の平木くんを思い出すと、やっぱり、嫌悪感しか出てこない。
 なのに――今、こうやっているなんて――……。
< 60 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop