甘い生活を夢見る私は、甘くない彼に甘やかされる
「――遅かったね」
「え」
ようやく決まったコラボ商品のおにぎりとサラダ、朝食用の総菜パン、ペットボトルのお茶と野菜ジュース。
それらを入れたエコバックを抱えてコンビニを出ると、右手から声が聞こえた。
私がそちらを見やると、広神さんが、携帯灰皿でタバコを消しながらやって来る。
「優柔不断?」
「え、あの……何で……」
一瞬、ストーカーという言葉がよぎってしまうが、まだ、彼という人を知っているワケじゃない。
そう思って尋ねれば、あきれたように言われた。
「何か、ポヤポヤしてると思ったけど――ニュース、見てねぇの?最近、この周辺で、ひったくり被害が増えてんの」
「……え」
呆然としている私に、彼は、苦笑いで続ける。
「――まあ、隣人が被害者とか、寝覚めが悪ぃんで。ストーカーとか言われるのも嫌だし、一緒に帰ろうぜ」
「え、あ、ありがとうございます……」
チラリと空を見上げれば、もう、辺りは日が落ち始めている。
いくら、夏が近づいていていようが、夜は夜だ。
さすがにこの状況で断るのも悪いし、被害者になるのも嫌なので、素直に受けるコトにする。
「じゃあ、行きますか」
「あ、ハ、ハイ」
私はうなづくと、一歩先を行く広神さんの後をついて行く。
彼は、時々チラリとこちらをうかがいながら、無言で歩いた。
――……何だか、ボディガードみたい……。
昔、何かのパーティーに参加した時、こんな風にSPみたいな人をつけていた人たちがいたのを思い出す。
さすがに、私は、そんな大仰なコトはなかったけれど。
「――夕飯、何にした?」
「え」
すると、不意にそう尋ねられ、私は顔を上げる。
そして、一拍遅れて、エコバックの中を見せた。
「あ、あの、おススメのシリーズ……美味しそう、だったので……」
彼は、目を丸くして私を見ると、声を抑えて笑い始めた。
「――え、あ、あの……?」
「い、いや。……まさか、中身見せてくるとは思わなかった」
「え」
――あ、商品言うだけで良かったの?
けれど、時すでに遅し。
何かのツボに入ったのか、広神さんは、そのまま立ち止まり笑い続けた。
時折、通り過ぎる人達が、チラリと見ていくのが気になるが、それよりも――。
「あ、あのっ……笑い過ぎじゃないですかぁー?!」
「あ、ああ、ゴメン、ゴメン。……ホント、面白いな、アンタ」
「……褒めてませんよね」
「褒めてるって」
ふてくされる私に、笑いをこらえながらなだめる広神さん。
――他人が見たら、まるで、恋人同士のようなやり取りに見えるんだろうか。
それでも――私にとって、それは、先輩であってほしい。
「ま、機嫌直して。コレあげるから」
「え」
そう言って、彼は、自分の持っていたコンビニ袋から、缶コーヒーを一本取り出すと、問答無用で私のエコバックに入れた。
「あ、あの」
けれど、戸惑う私をよそに、再び歩き出す広神さんは、何だか機嫌が良さそうだったので、それ以上は口を閉じるコトにする。
そして、すぐにアパートに到着すると、お互い、部屋のカギを開け会釈し合った。
「じゃあ――おやすみ」
「あ、お、おやすみなさい」
私が挨拶を返すと、彼は、口元を上げ、中に入る。
それを見送り、自分も中に入れば――既に、良い匂いが。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「え、ま、増沢??」
食事の用意を終えた増沢が、広くなったテーブルに、いつものように美味しそうなご飯を並べて、姿勢良く私を待っていたのだった。
「え」
ようやく決まったコラボ商品のおにぎりとサラダ、朝食用の総菜パン、ペットボトルのお茶と野菜ジュース。
それらを入れたエコバックを抱えてコンビニを出ると、右手から声が聞こえた。
私がそちらを見やると、広神さんが、携帯灰皿でタバコを消しながらやって来る。
「優柔不断?」
「え、あの……何で……」
一瞬、ストーカーという言葉がよぎってしまうが、まだ、彼という人を知っているワケじゃない。
そう思って尋ねれば、あきれたように言われた。
「何か、ポヤポヤしてると思ったけど――ニュース、見てねぇの?最近、この周辺で、ひったくり被害が増えてんの」
「……え」
呆然としている私に、彼は、苦笑いで続ける。
「――まあ、隣人が被害者とか、寝覚めが悪ぃんで。ストーカーとか言われるのも嫌だし、一緒に帰ろうぜ」
「え、あ、ありがとうございます……」
チラリと空を見上げれば、もう、辺りは日が落ち始めている。
いくら、夏が近づいていていようが、夜は夜だ。
さすがにこの状況で断るのも悪いし、被害者になるのも嫌なので、素直に受けるコトにする。
「じゃあ、行きますか」
「あ、ハ、ハイ」
私はうなづくと、一歩先を行く広神さんの後をついて行く。
彼は、時々チラリとこちらをうかがいながら、無言で歩いた。
――……何だか、ボディガードみたい……。
昔、何かのパーティーに参加した時、こんな風にSPみたいな人をつけていた人たちがいたのを思い出す。
さすがに、私は、そんな大仰なコトはなかったけれど。
「――夕飯、何にした?」
「え」
すると、不意にそう尋ねられ、私は顔を上げる。
そして、一拍遅れて、エコバックの中を見せた。
「あ、あの、おススメのシリーズ……美味しそう、だったので……」
彼は、目を丸くして私を見ると、声を抑えて笑い始めた。
「――え、あ、あの……?」
「い、いや。……まさか、中身見せてくるとは思わなかった」
「え」
――あ、商品言うだけで良かったの?
けれど、時すでに遅し。
何かのツボに入ったのか、広神さんは、そのまま立ち止まり笑い続けた。
時折、通り過ぎる人達が、チラリと見ていくのが気になるが、それよりも――。
「あ、あのっ……笑い過ぎじゃないですかぁー?!」
「あ、ああ、ゴメン、ゴメン。……ホント、面白いな、アンタ」
「……褒めてませんよね」
「褒めてるって」
ふてくされる私に、笑いをこらえながらなだめる広神さん。
――他人が見たら、まるで、恋人同士のようなやり取りに見えるんだろうか。
それでも――私にとって、それは、先輩であってほしい。
「ま、機嫌直して。コレあげるから」
「え」
そう言って、彼は、自分の持っていたコンビニ袋から、缶コーヒーを一本取り出すと、問答無用で私のエコバックに入れた。
「あ、あの」
けれど、戸惑う私をよそに、再び歩き出す広神さんは、何だか機嫌が良さそうだったので、それ以上は口を閉じるコトにする。
そして、すぐにアパートに到着すると、お互い、部屋のカギを開け会釈し合った。
「じゃあ――おやすみ」
「あ、お、おやすみなさい」
私が挨拶を返すと、彼は、口元を上げ、中に入る。
それを見送り、自分も中に入れば――既に、良い匂いが。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「え、ま、増沢??」
食事の用意を終えた増沢が、広くなったテーブルに、いつものように美味しそうなご飯を並べて、姿勢良く私を待っていたのだった。