甘い生活を夢見る私は、甘くない彼に甘やかされる
LIFE.17
「ど……どうしたの、増沢?この前、来たばっかりよね?」
「いえ、少々、気にかかる情報がございましたので、ご様子をうかがいに――」
そう、淡々と答えられ、私は、先ほど広神さんに言われたコトを思い出す。
「もしかして――ひったくり?」
増沢は、その答えに、若干微妙な表情を見せる。
「……さようでございますが……お嬢様が、ご存じだったとは……」
「バカにしてる?ちゃんと、知ってるんだから」
いつも言われてばかりだったので、ここぞとばかりに胸を張って返す。
けれど、増沢は、私が無意識に差し出したバッグたちを受け取りながら、苦笑いで言った。
「いよいよ、ニュースをチェックするようになられましたか」
「……べ、別に……たまたまよ、たまたま。……ニュースは、見てない……」
バカ正直に答えながら、小さくなってしまう。
そして、見慣れたメニューが並んだテーブルを見て、私は、増沢に尋ねた。
「でも、それならそうと、連絡くれればよかったのに。そしたら、ご飯買いに行かなくて済んだのよ」
「緊急ではございましたが、いつものご帰宅の時間も近かったもので、こちらでお待ちしていた方が早いかと」
増沢は、そう言って、頭を深々と下げる。
「ま、まあ良いわよ。久し振りの増沢の料理だもん」
「お嬢様、ストック料理は、どうされました?」
「う・」
私は、一瞬口ごもる。
「……えっと……もう、お給料日前だから……いざという時のために……」
「……お嬢様、増沢は、召し上がっていただくために、作っておいているのですよ。冷凍庫に埋めるためでは、ございません」
「わ、わかってるってば!もう、冷めちゃうから、食べる!」
そんなやり取りを強制的に終了し、私は、増沢のいつもの味に、ほう、と、胸がいっぱいになる。
――ああ、やっぱり、自分でも作れるようにならなきゃな……。
この味が、いずれ食べられなくなるのは、嫌。
私は、後ろに控えている増沢を振り返り、見上げる。
「ねえ、増沢」
「ハイ。何でございましょう」
「料理、教えてくれない?」
「――ハイ?」
さすがに唐突すぎたのか、珍しくポーカーフェイスを崩した増沢は、私の隣にヒザをついた。
「どうなされました、お嬢様?何か、悪い物でもお召し上がりに――」
「何でよ!……た、ただ、いつまでも増沢が作ってくれるワケでもないし……何より、自分で食べたい味が、食べられなくなるのが、嫌なの」
「……増沢は、生涯現役のつもりでございますが」
少々ふてくされたオーラを発しながら、そう言われるが、私は、先輩に言われたコトを思い出す。
「でも――私が、自分でできるようになったら、増沢の心労も減るんじゃないかと思ったの」
「お嬢様」
「……もちろん、長生きしてもらわないと困るけど」
「――さようでございますね」
何だか、言っているうちに恥ずかしくなってしまったけれど――明日、生きて会えるとは、限らないのだ。
――両親のように。
増沢は、私が食べ終えるまでの間、メモ用紙に、サラサラとレシピを書き出す。
「一番最初は、簡単なものからに致しましょう」
「わ、わかってるってば」
「そう言えば、お嬢様」
「何よ」
思い出したように言われ、私は、箸を持ったまま増沢を見やる。
「一応、やる気は、おありのようで、少し安心いたしました」
「――え」
「包丁や、鍋など、いろいろ揃えていらっしゃって」
「あ、それは、先輩が――」
そう言いかけ、言葉を飲み込む。
――マズい。
――先輩とはいえ、男性を部屋に入れたって言えるワケが……。
けれど、増沢は、表情を変えず、穏やかに私に言った。
「それで――その”先輩”とは、どのようなご関係で?」
「いえ、少々、気にかかる情報がございましたので、ご様子をうかがいに――」
そう、淡々と答えられ、私は、先ほど広神さんに言われたコトを思い出す。
「もしかして――ひったくり?」
増沢は、その答えに、若干微妙な表情を見せる。
「……さようでございますが……お嬢様が、ご存じだったとは……」
「バカにしてる?ちゃんと、知ってるんだから」
いつも言われてばかりだったので、ここぞとばかりに胸を張って返す。
けれど、増沢は、私が無意識に差し出したバッグたちを受け取りながら、苦笑いで言った。
「いよいよ、ニュースをチェックするようになられましたか」
「……べ、別に……たまたまよ、たまたま。……ニュースは、見てない……」
バカ正直に答えながら、小さくなってしまう。
そして、見慣れたメニューが並んだテーブルを見て、私は、増沢に尋ねた。
「でも、それならそうと、連絡くれればよかったのに。そしたら、ご飯買いに行かなくて済んだのよ」
「緊急ではございましたが、いつものご帰宅の時間も近かったもので、こちらでお待ちしていた方が早いかと」
増沢は、そう言って、頭を深々と下げる。
「ま、まあ良いわよ。久し振りの増沢の料理だもん」
「お嬢様、ストック料理は、どうされました?」
「う・」
私は、一瞬口ごもる。
「……えっと……もう、お給料日前だから……いざという時のために……」
「……お嬢様、増沢は、召し上がっていただくために、作っておいているのですよ。冷凍庫に埋めるためでは、ございません」
「わ、わかってるってば!もう、冷めちゃうから、食べる!」
そんなやり取りを強制的に終了し、私は、増沢のいつもの味に、ほう、と、胸がいっぱいになる。
――ああ、やっぱり、自分でも作れるようにならなきゃな……。
この味が、いずれ食べられなくなるのは、嫌。
私は、後ろに控えている増沢を振り返り、見上げる。
「ねえ、増沢」
「ハイ。何でございましょう」
「料理、教えてくれない?」
「――ハイ?」
さすがに唐突すぎたのか、珍しくポーカーフェイスを崩した増沢は、私の隣にヒザをついた。
「どうなされました、お嬢様?何か、悪い物でもお召し上がりに――」
「何でよ!……た、ただ、いつまでも増沢が作ってくれるワケでもないし……何より、自分で食べたい味が、食べられなくなるのが、嫌なの」
「……増沢は、生涯現役のつもりでございますが」
少々ふてくされたオーラを発しながら、そう言われるが、私は、先輩に言われたコトを思い出す。
「でも――私が、自分でできるようになったら、増沢の心労も減るんじゃないかと思ったの」
「お嬢様」
「……もちろん、長生きしてもらわないと困るけど」
「――さようでございますね」
何だか、言っているうちに恥ずかしくなってしまったけれど――明日、生きて会えるとは、限らないのだ。
――両親のように。
増沢は、私が食べ終えるまでの間、メモ用紙に、サラサラとレシピを書き出す。
「一番最初は、簡単なものからに致しましょう」
「わ、わかってるってば」
「そう言えば、お嬢様」
「何よ」
思い出したように言われ、私は、箸を持ったまま増沢を見やる。
「一応、やる気は、おありのようで、少し安心いたしました」
「――え」
「包丁や、鍋など、いろいろ揃えていらっしゃって」
「あ、それは、先輩が――」
そう言いかけ、言葉を飲み込む。
――マズい。
――先輩とはいえ、男性を部屋に入れたって言えるワケが……。
けれど、増沢は、表情を変えず、穏やかに私に言った。
「それで――その”先輩”とは、どのようなご関係で?」