甘い生活を夢見る私は、甘くない彼に甘やかされる
LIFE.21
 それから、振り分け終わった服は、美善さんが持って行く事になった。
 玄関にズラリと置かれたショップの袋の数々は、私が買った時にそのままクローゼットの奥に突っ込んでおいたものたちだ。
 それらを軽々と抱え上げると、彼は私に言った。

「コイツらは、一旦、ウチに置いておく。で、まとまるまでに、オレの方で買い取り業者探しておくから」

「……お任せしますー」

「たった一回着ただけのブランド物だからな。そこら辺の店より、相応の業者の方が良い」

 私は、その言葉に、顔を上げる。

「……美善さん、女性の服のブランド知ってるんだ……」

 ポツリ、と、何気なくつぶやくと、彼は、一瞬言葉に詰まる。
「あー……まあ、昔、ちょっと母親に叩き込まれてな……」
「……お母さん(・・・・)に?」
「――……っ……」
 私がキョトンとして返すと、彼は、急に、その場にしゃがみ込んで顔を伏せる。
「み、美善さん?どうしたの?どこか痛い⁉」
 慌てて同じようにしゃがみ込むと、ジロリ、と、睨まれた。
「……美善さん?」
「……攻撃力高ぇよ、ホント……」
「……何が?」
 何故か、真っ赤になった彼は、気を取り直して立ち上がる。
 どうやら、特に体調不良というワケではなかったようで、私は、安心した。
「まあ、いい。追々だ。――じゃあ、今日は帰るから――まだ、一人で包丁使うなよ?火もだぞ」
「……完全に子供扱い!」
「何かあっても、すぐに駆け付けられねぇだろ」
「う……」
 渋々うなづくと、彼は、そっと髪を撫で、耳元にかける。
 そして、至近距離まで顔を近づけると、低く囁いた。

「――良いコにしてろよ、月見?」

「……っ……!」

 ――ああ、もう!
 ――ホント、子供扱いなんだから……!

 そう反論する前に、首筋にキスを落とされ、言葉は飲み込んだ。
 覚えのある痛みに、私は、顔を上げた美善さんを見上げる。

「……ま、まさか……つけた?」

「おう。――虫よけだ、虫よけ」

「何、それ!」

「嫌なら、首が隠れる服着ておけ」

「横暴!」

 ――お互い、言い合いながらも、口元は上がってしまう。

 もう、こんなやり取りは、上司と部下の時から日常茶飯事。
 でも――中身は、全然違う。

「ちゃんとあっただろ。ハイネックのノースリーブだったか」
「……覚えてるの?」
「――まあ、割と、好みだからな」
「……うー……」
「別に、今着ろとは言ってねぇ」
「でも、また、探さなきゃじゃないー……」
 私は、チラリ、と、クローゼットの方を振り返る。
 すると、美善さんは、ニヤリ、と、口元を上げた。
「ちょうど良いじゃねぇの。もう少し片付けられるな」
「……っ……!!」
 ――わざと⁉わざとなの⁉
 がく然とする私に、彼は、楽しそうに笑う。
「大丈夫だ。見えるか見えねぇかってトコだから」
「――……探しますー。お疲れ様でした、日水主任ー」
 私は、頬を膨らませながら、そっぽを向く。
 せめてもの仕返しだ。背徳感とやらに負けてしまえ。
 すると、グイ、と、力任せに引き寄せられた。
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