甘い生活を夢見る私は、甘くない彼に甘やかされる
アパートの部屋を後にする美善さんを見送ると、私は、ダッシュで洗面所の鏡の前に立った。
そして、首元を写し――がく然としてしまう。
――美善さんのバカ!
――完全に見える‼
私は、今着ている襟付きのカットソーを脱いで、あちらを向いたり、こちらを向いたり。
結果、先ほどつけたキスマークは、ハイネックでなければ隠れてくれない位置は確定してしまった。
「……服、探さなきゃ……」
一旦、より分けた服の山を見やると、私は、覚悟を決めて漁り出す。
どう考えたって、月曜までに消えると思えない。
――これから、頑張って生活していこうと思った矢先に、何てコトしてくれんのよ!
心の中でボヤくけれど――でも、ほんの少しだけ、うれしさもある。
――こんな風にしたいって思うくらい、私を好きでいてくれるんだって……。
そんな風に思考が流れ、その場に倒れ込み、悶えてしまう。
――でも……だからこそ、私が、あんな風にいやらしいコト思っちゃったって、知られたくない。
「……絶対、秘密にしなきゃ……」
そう決意すると、再び、服の山に手を伸ばす。
結局、良さそうなものを探し当てたのは、それから一時間ほどかかってからだった。
「あれ、津雲田さん」
「――こ、こんばんは、広神さん……」
夕飯は、増沢の作り置きにするにしても、明日のご飯が無いので、私は、何とかスカーフで首元を隠し、いつものコンビニに出掛けた。
広神さんは、ちょうど、レジから離れるところで、声をかけてきた。
「今日は、彼氏さんはいないの?」
「あ、いえ、もう帰ったので……」
「ふぅん。――用でもあった?」
「そ、そういう訳じゃ……」
そう返せば、彼は、珍しいものを見るような表情になった。
「あ、あの……」
「ああ、いや――まあ、自分らが良いなら、良いんだけどね」
「え?」
私は、言葉の意味がわからず、キョトンと返す。
すると、彼は、入荷していた商品を取り出し、棚に並べながら言った。
「普通、週末に彼女の家に来たら、泊まりだと思ってさ」
「――え」
「まあ、付き合いが長いなら、そういうのもアリか」
「え、あ、いえ……」
――普通、そうなの?
私は、視線を下げる。
付き合いが長いというなら、上司と部下であれば、二年は経つ。
――けれど、恋人同士になったのは、つい、最近なのに。
すると、視界いっぱいに、広神さんの顔が現われる。
「――……っ!!?」
それに、ギョッとして、思わず後ずさってしまった。
「……あ、あの……?」
「ねえ、ホントに付き合ってんの?」
「え」
「――何か、表情、暗くない?」
「――え」
私は、ドキリ、と、鳴る心臓を、無意識に服の上から押さえる。
「つ、付き合って、ます……」
「……じゃあ――彼氏さんが浮気とか?」
「は⁉」
目を剥く私に、広神さんは、背を向けて商品を並べ続ける。
「だって、さっきまで彼氏といた女の子の表情に見えないんだけど」
「――え」
「何か悩んでるなら、聞くだけ聞こうか?」
彼は、肩越しに振り返ると私を見やり、そう言った。
「な、悩むなんて……」
――私の秘密は、広神さんには、関係の無い事なんだから――……。
視線を逸らす私に、彼は、淡々と続けた。
「赤の他人だから、異性だから、わかるコトもあるんじゃない?」
「――……え……」
でも――アレは、誰にも言いたくない。
そう思ったのが伝わったのか、彼は、手を動かし続ける。
「――ま、気が変わったら、話してよ。せっかくのお隣さんなワケだしさ」
「……あ、ありがとう……ございます……」
広神さんは、純粋に厚意で言っているのだろう。
――でも――プライベートの深いところを話せるような関係ではない。
私は、そう思い、ご飯を選ぶために、彼のそばを離れた。
そして、首元を写し――がく然としてしまう。
――美善さんのバカ!
――完全に見える‼
私は、今着ている襟付きのカットソーを脱いで、あちらを向いたり、こちらを向いたり。
結果、先ほどつけたキスマークは、ハイネックでなければ隠れてくれない位置は確定してしまった。
「……服、探さなきゃ……」
一旦、より分けた服の山を見やると、私は、覚悟を決めて漁り出す。
どう考えたって、月曜までに消えると思えない。
――これから、頑張って生活していこうと思った矢先に、何てコトしてくれんのよ!
心の中でボヤくけれど――でも、ほんの少しだけ、うれしさもある。
――こんな風にしたいって思うくらい、私を好きでいてくれるんだって……。
そんな風に思考が流れ、その場に倒れ込み、悶えてしまう。
――でも……だからこそ、私が、あんな風にいやらしいコト思っちゃったって、知られたくない。
「……絶対、秘密にしなきゃ……」
そう決意すると、再び、服の山に手を伸ばす。
結局、良さそうなものを探し当てたのは、それから一時間ほどかかってからだった。
「あれ、津雲田さん」
「――こ、こんばんは、広神さん……」
夕飯は、増沢の作り置きにするにしても、明日のご飯が無いので、私は、何とかスカーフで首元を隠し、いつものコンビニに出掛けた。
広神さんは、ちょうど、レジから離れるところで、声をかけてきた。
「今日は、彼氏さんはいないの?」
「あ、いえ、もう帰ったので……」
「ふぅん。――用でもあった?」
「そ、そういう訳じゃ……」
そう返せば、彼は、珍しいものを見るような表情になった。
「あ、あの……」
「ああ、いや――まあ、自分らが良いなら、良いんだけどね」
「え?」
私は、言葉の意味がわからず、キョトンと返す。
すると、彼は、入荷していた商品を取り出し、棚に並べながら言った。
「普通、週末に彼女の家に来たら、泊まりだと思ってさ」
「――え」
「まあ、付き合いが長いなら、そういうのもアリか」
「え、あ、いえ……」
――普通、そうなの?
私は、視線を下げる。
付き合いが長いというなら、上司と部下であれば、二年は経つ。
――けれど、恋人同士になったのは、つい、最近なのに。
すると、視界いっぱいに、広神さんの顔が現われる。
「――……っ!!?」
それに、ギョッとして、思わず後ずさってしまった。
「……あ、あの……?」
「ねえ、ホントに付き合ってんの?」
「え」
「――何か、表情、暗くない?」
「――え」
私は、ドキリ、と、鳴る心臓を、無意識に服の上から押さえる。
「つ、付き合って、ます……」
「……じゃあ――彼氏さんが浮気とか?」
「は⁉」
目を剥く私に、広神さんは、背を向けて商品を並べ続ける。
「だって、さっきまで彼氏といた女の子の表情に見えないんだけど」
「――え」
「何か悩んでるなら、聞くだけ聞こうか?」
彼は、肩越しに振り返ると私を見やり、そう言った。
「な、悩むなんて……」
――私の秘密は、広神さんには、関係の無い事なんだから――……。
視線を逸らす私に、彼は、淡々と続けた。
「赤の他人だから、異性だから、わかるコトもあるんじゃない?」
「――……え……」
でも――アレは、誰にも言いたくない。
そう思ったのが伝わったのか、彼は、手を動かし続ける。
「――ま、気が変わったら、話してよ。せっかくのお隣さんなワケだしさ」
「……あ、ありがとう……ございます……」
広神さんは、純粋に厚意で言っているのだろう。
――でも――プライベートの深いところを話せるような関係ではない。
私は、そう思い、ご飯を選ぶために、彼のそばを離れた。