甘い生活を夢見る私は、甘くない彼に甘やかされる
 コンビニから帰ると、私は、スカーフを取り、ベッドに放り投げた。

 ――浮気。

 その言葉がよぎってしまい、ストン、と、その場にへたり込む。

 ――……もしかして、美善さん……本当は、お見合いの人と、付き合ってるんじゃ……。

 だって、同じ恋愛初心者なのに、全然違うもの。

 そりゃあ、私が箱入りだってコトは、嫌ってほどにわかってるけど――でも、何にも知らないって訳じゃないし。
 クラスの()達が話しているのを聞いていたり、ドラマや映画で観たりして、最低限の知識くらいはあるつもりなのに――。

「――……全然、初心者がするようなキスじゃなかった……」

 私は、先ほどの彼のキスを思い出し、ラグの上に倒れ込む。

 ――……どうしよう。
 ――身体が、熱い。


 ――……もっと、したい――……。


 ――もっと、触ってほしい。

 ――ギュッてしたいし、してほしい。


 ――離れたくない。


 こんな風に思うなんて、私、どうかしちゃったのかな。

 自分の中の感情が、コントロールできない。


 そんな自分に、戸惑うしかなかった。



 翌朝、ぼうっとしながら朝食のパンをかじっていると、ベッドに投げたままのスマホが振動。
 私は、身体を跳ね上げるようにして立ち上がり、それをに取った。
 表示は――美善さんだ。

「もっ……もしもし」

『おはよう、月見。起きてたか?』

「……お、起きてるもん。……パン、食べてたの」

『そうか。今日も行こうかと思ったんだけど――悪ィな。逃げられねぇ用事が入っちまって』

「……そ、そう……」

 私が口ごもりながら返すと、美善さんは、気まずそうに言った。
『――拗ねるなよ。オレだって、不本意なんだから』
 けれど――昨夜の思考が残っていた私には、それが素直に受け取れない。
「……わ……わかってる」
『おい、どうした』
「――別に……何でもありませんー」
『月見』
「何でもないってば!じゃあ、また明日、先輩(・・)!」
 勢いに任せて口走って――思わず電話を切ってしまった。

 ――ああ、もう……ヤダ……。

 スマホをベッドに放り投げ、テーブルに伏せる。

 ――……広神さんの言うコトを全部信じているワケじゃない。

 ――でも――……よぎってしまった思いは、完全に、私の中に根を張ってしまったのだった。
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