甘い生活を夢見る私は、甘くない彼に甘やかされる
その日から、美善さんからの電話もメッセージも無くなった。
会社で会えば、仕事上の会話はできるけれど――プライベートは、何も無い。
――……もしかして……本当に、浮気?
モヤモヤしながらも、作業の手は止めない。
それは、同じグループの人達に迷惑をかけられないから。
今までとは打って変わった仕事への姿勢に、池之島さんは少しだけ微妙な表情だったけれど、足を引っ張らないようにと言ったのは、彼女だ。
「今日は、もう、終わりにしようか」
「そうですね」
「賛成ー!」
最初の辺りから、リーダー的な役割を担っていた嘉山さんは、そのまま正式にリーダーとして認識されていた。
その彼が言うのだから、今日は終了になる。
「週末だし、早く帰りたいでしょ」
「もちろんー!合コンが待ってるからさー!」
内沼さんの明るい返事に、私は、ドキリ、と、する。
――少し前の私のよう。
「じゃあ、僕は、来週からのスケジュールだけ作って、送っておくから」
「よろしく、嘉山。お先ー」
「お先に失礼します」
先に部屋を後にする内沼さんと池之島さんを見送ると、私は、嘉山さんを振り返った。
「あ、あの……カギ閉めるので……」
「ああ、ハイ」
淡々と返され、何だか気まずい。
今週、ずっと一緒に仕事をしているけれど――正直言って、”何を考えてるのかわからない人”。
リーダーにされるだけあって、理論的で、淡々としている印象だ。
でも、美善さんが、割とストレートな人だから、私には、こういうタイプは苦手な感じがする。
すると、彼は、思い出したように言った。
「そうだ、津雲田さん」
「ハイ?」
「日水とケンカでもした?」
「――え?」
私は、思わず目を丸くし――思い出す。
この人と、内沼さんは、三コ上――というコトは、美善さんと同期なのだ。
嘉山さんは、口元を上げると、眼鏡を上げた。
「二人とも、わかりやす過ぎて笑えるんだけど」
「……え、あ、あの……」
そう言えば、総務部内には付き合っているってコトはバレている――けど、あの時は偽装だったし!
私は、戸惑いながら、彼を見上げる。
「――ま、キミが来た当初から、ケンカ三昧だったけど、今回空気悪いからさ。深刻かと思って」
「……い、いえ……そういう、ワケじゃ……」
ごまかしているのは、バレバレだろうけれど――これ以上は、言いたくなかった。
それに気づいたのか、彼は、あっさりとエレベーターまで向かい、階数ボタンを押す。
「あ」
「え」
――もう、条件反射かな。
恥ずかしくなって肩を縮こませていると、嘉山さんは、口元を上げて言った。
「――押したかった?」
それに素直にうなづきたくなくて、私は、少々赤くなっただろう顔を伏せたのだった。
会社で会えば、仕事上の会話はできるけれど――プライベートは、何も無い。
――……もしかして……本当に、浮気?
モヤモヤしながらも、作業の手は止めない。
それは、同じグループの人達に迷惑をかけられないから。
今までとは打って変わった仕事への姿勢に、池之島さんは少しだけ微妙な表情だったけれど、足を引っ張らないようにと言ったのは、彼女だ。
「今日は、もう、終わりにしようか」
「そうですね」
「賛成ー!」
最初の辺りから、リーダー的な役割を担っていた嘉山さんは、そのまま正式にリーダーとして認識されていた。
その彼が言うのだから、今日は終了になる。
「週末だし、早く帰りたいでしょ」
「もちろんー!合コンが待ってるからさー!」
内沼さんの明るい返事に、私は、ドキリ、と、する。
――少し前の私のよう。
「じゃあ、僕は、来週からのスケジュールだけ作って、送っておくから」
「よろしく、嘉山。お先ー」
「お先に失礼します」
先に部屋を後にする内沼さんと池之島さんを見送ると、私は、嘉山さんを振り返った。
「あ、あの……カギ閉めるので……」
「ああ、ハイ」
淡々と返され、何だか気まずい。
今週、ずっと一緒に仕事をしているけれど――正直言って、”何を考えてるのかわからない人”。
リーダーにされるだけあって、理論的で、淡々としている印象だ。
でも、美善さんが、割とストレートな人だから、私には、こういうタイプは苦手な感じがする。
すると、彼は、思い出したように言った。
「そうだ、津雲田さん」
「ハイ?」
「日水とケンカでもした?」
「――え?」
私は、思わず目を丸くし――思い出す。
この人と、内沼さんは、三コ上――というコトは、美善さんと同期なのだ。
嘉山さんは、口元を上げると、眼鏡を上げた。
「二人とも、わかりやす過ぎて笑えるんだけど」
「……え、あ、あの……」
そう言えば、総務部内には付き合っているってコトはバレている――けど、あの時は偽装だったし!
私は、戸惑いながら、彼を見上げる。
「――ま、キミが来た当初から、ケンカ三昧だったけど、今回空気悪いからさ。深刻かと思って」
「……い、いえ……そういう、ワケじゃ……」
ごまかしているのは、バレバレだろうけれど――これ以上は、言いたくなかった。
それに気づいたのか、彼は、あっさりとエレベーターまで向かい、階数ボタンを押す。
「あ」
「え」
――もう、条件反射かな。
恥ずかしくなって肩を縮こませていると、嘉山さんは、口元を上げて言った。
「――押したかった?」
それに素直にうなづきたくなくて、私は、少々赤くなっただろう顔を伏せたのだった。