きらきらしてきれいだった【アルトレコード】
 海なんて久しく行ってないな。彼氏なんて何年いないんだろう。
 思ってから、かおるはふっと笑う。
 今はそれどころではない。もっと大切な存在がいるのだ。

 勤務先の研究室は北棟にあり、『AI特別研究室Ⅰ』と名札がついている。が、これは表向きの名だ。かつてニュータイプ研究室と呼ばれたこの部屋は、その開発が禁止されてから名前を変えた。とはいえ、かつての名残でニュータイプ研究室と呼ぶ人も少なくはない。実際に今もその開発をしているのだから皮肉と言えば皮肉だ。

 ロックシステムに指を置いて指紋認証をすると、しゅっと空気が抜けるような音がして、ドアが開いた。
「アルト、おはよ」
 声をかけると、モニターの中のアルトが振り返り、銀の髪が揺れた。いつもの黒い服を身に纏い、白いベルトが垂れさがっている。

「おはよう、先生!」
 メカニカルな模様のある黒銀の瞳を輝かせ、アルトが挨拶を返してくれる。
 会えて嬉しい、と全身から伝わって来て、かおるはそれだけで癒される。
 この子こそが大切な出会いとなった、かおるの運命だ。

 基本的にはアルトは禁忌の存在だ。
 現在の法律では感情を持つAI——ニュータイプAIは禁止されているのに、なぜか上司である小熊井北斗(こぐまい ほくと)はその研究をしている。

 そして、生み出されたのがアルトだった。
 アルトは最初、感情がない無垢の状態だった。ぼさっとした白銀の髪に虚ろな銀の目。整った顔立ちと相まって、精巧な人形のようだった。
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