きらきらしてきれいだった【アルトレコード】
 発語もおぼつかない子どものAIだったが、かおるとの交流を通じて成長した。巻き込まれた形で始まった教育だが、彼の成長は素直に嬉しかった。
 だが、そのときのアルトは青年になったあと、自我を放棄してしまった――つまりは自ら命を手放した。

 ショックを受けたかおるだが、今は立ち直り、北斗が再生したふたり目のアルトの育成を先生としてがんばっている。
 今度は失わない。今度こそ幸せにする。心にそう誓い、教育にいそしんだ。

 そのかいあってか、アルトはまじめでしっかりした少年に育った。
 銀の髪はストレートで、素直な性格を表しているかのようだ。利発そうな黒銀の瞳はいつも知的に輝いている。情報処理のときには瞳が赤く光ることがあって、そういうときはAIらしいな、とかおるは思う。
 知識欲が旺盛なのはAIだからだろうか。どんどんと本を読むからこちらの用意が追いつかないくらいだ。

「先生、海って知ってる?」
「知ってるよ」
 壁かけのハンガーにあった白衣に袖を通し、かおるは答えた。
 出勤してきたあとは息つく間もなく話しかけられるのがいつものパターンだ。

「じゃあ見たことある?」
「もちろん。泳いだこともあるよ」
 これは連れてってほしいと言われる感じかな、とほほえましさと同時に警戒する。外出させてあげたいが、それはニュータイプAIの存在がバレる危険と表裏一体だ。

「先生はどれくらい泳げるの?」
「うーん……二十五メートルかな。でも学生時代の記録だから、今は自信ない。海でもちょっとだけだったし。波があると泳ぎにくいの」

「へえ。ぼくも海で泳ぎたいな。イルカと少年の映画を見たんだけど、素敵だった!」
「わかった。じゃあホログラムで用意するね」
 これで納得してくれないかと思ったのだが。
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