きらきらしてきれいだった【アルトレコード】
「ア……ルト」
 咳き込みながら手を伸ばしたが、一瞬早く雄介の手が端末をつかむ。
「返して!」
 かおるは必死にその手をつかむ。

「やっと水族館で働けたんだ、未来を潰されてたまるか!」
 雄介が怒鳴る。
「船長さん!」
 かおるは叫んだが、船長は音楽をノリノリで聴いているせいで、まったく気が付かない。
 必死に抵抗するが、再度の波で揺れ、倒れかけた瞬間にアルトの端末が奪われた。

 直後、雄介が端末を海に投げる。
「アルト!」
 船べりに身を乗り出したときだった。
 波がまた船を揺らし、かおるは海に落ちた。

 水中に沈んだ彼女の喉に容赦なく海水が入り込んだ。落ちたときの水泡でなにも見えなくなり、上下すらわからない。
 必死になって水をかくと、ライフジャケットが自動展開されて浮き、顔が水面に出た。

 げほげほとむせながら呼吸をしていると、エンジンの始動音が聞こえた。
 かおるは驚愕した。どうして発進しようとしているの。

「待って!」
 悲鳴に似たその声はエンジン音にかき消される。
 やがて船は走り出し、雄介に指令を出されたらしいAIイルカたちは船について泳ぎ出す。

「待って、助けて!」
 叫びはやはり届かない。
「そんな……」
 かおるは絶望にうちひしがれた。
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