きらきらしてきれいだった【アルトレコード】
『君、どうしたの?』
「いえ、大丈夫です。たぶん……」
 先ほどと同じ個体だろうか。野生のイルカは、遊ぼうよ、と言いたげにAIイルカをつつき、体をくねらせる。

『今、海上保安庁から折り返しの連絡が来たから話してくる。一回切るよ』
「はい」
 かおるは北斗に答え、通信が途絶えた。
 ほかのAIイルカが来る気配はなく、船の影も見えない。

 じれったい時間が過ぎていく。
 アルトはさぞ不安だろう。自分は北斗と連絡がつき、AIイルカもいてひと安心できたのに。
 救助の手配はしてもらえた。自分はライフジャケットがあって沈むことはない。
 だったら、サンゴにアルトを探しに行ってもらってもいいのでは? 

「サンゴくん……できる?」
 サンゴは顔をこちらに向けた。
 その顔が、できるよ、と言っているように見えてしまう。

「だったらお願い……。アルトを助けて。昨日、一緒に遊んだよね。君が大好きなんだよ」
 サンゴはわかっているのかいないのか、かおるを見つめている。
「コード5171。海の中に落ちた端末……スマホを拾ってきて」
 もはや賭けだ。だが昨日のショーではスマホを拾って来ていた。だから、きっと。

「お願い。アルトを助けて。あの子を、あなたを大好きだって言ったあの子を……」
 重ねて言うと、サンゴはかおるから離れた。

 そのまま潜水を開始する。野生のイルカもサンゴに続いて泳いでいく。
 ショーとは違う。スマホは別物だし、海で見つかるかどうかはわからない。

 かおるは思わず両手を祈りの形に組んだ。
 どうか、無事でありますように。
 海原にひとり取り残され、だけど今のかおるには恐怖を感じる余裕はなかった。
 祈るのは、ただアルトの無事、それだけだ。
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