きらきらしてきれいだった【アルトレコード】
 波の音だけが響き、なにもできない時間がやたらとゆっくり、長く感じる。
 焦れて衛星端末の時計を見るが、まだ三分しかたっていない。

 いっそ、イルカに陸まで連れて行ってもらったほうがよかっただろうか。そうして、陸地でアルトを救うための手立てを練った方がよかっただろうか。
 いや、さすがに陸までは無理か。波もあるし、ずっとしがみつくのも体力がいる。

 救助モードを解除したから、もう救難信号は出されていない。あの短い時間で、信号を拾ってくれたとは思えないから船はきっと来ない。

 大丈夫、と自分に言い聞かせる。
 遭難は北斗が認知している。衛星通信のGPSで場所は伝わっている。救助がこちらに向かっているはずだ。

 北斗ならアルトを見捨てない。
 思った直後、最初のアルトが自我を消したときの北斗が蘇る。

 彼はあのとき、冷静に次のアルトを起動させた。その姿はいっそ冷淡にすら見えた。何年もかけて育てたはずのアルトを、あっさりと見捨てたように見える。

 ……違う。
 かおるは疑いをすぐさま否定した。
 確かに冷淡に見えた。ドライに見えた。
 だけど、きっと、あの場に自分がいたからだ。
 だから平気なふりをして、自分を安心させるために今のアルトを起動したのだ。

 きっと、陰ではアルトを忍び、悲しんでいただろう。普段の北斗は弱みを見せない。だけど、だから、きっと。
 私の知ってる北斗さんは、きっとアルトを見捨てない。
 だから、私がここで負けちゃいけない。
 そう信じて、かおるはぐっと耐える。
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