きらきらしてきれいだった【アルトレコード】
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これで10回目だ。
サンゴは冷静にカウントし、海に潜る。
水族館のプールと違って波が強く、ヒレや尻尾への負担が大きい。エネルギー残量はどんどん減っていく。潜るだけ光が届かなくなり、ソーラー発電では追い付かない。
野生のイルカが一緒に泳ぐのを何度も観測した。彼女が親しげに胸ヒレでタッチしてくるから、同じようにヒレをタッチして親愛を返す。
仲間だろう、とサンゴは認識していた。ならば仲良くするべきで、協力しあえる存在だ。
だが、水族館の仲間とはなにかが違う。
海底で端末を探すように指示されているが、この仲間は一緒に探してくれない。
海底300メートルまで行く。機能としてはぎりぎりの深度だ。
水族館ではプールに四角の小さな板を落とす係員がいて、取ってくることを覚えさせられた。渡すと人間が喜ぶから、サンゴも嬉しかった。
今回も見つけて喜ばせたい。だが、なんど探しても見つからない。
ふと見ると、なだらかな下り坂になった海底の先に大きな亀裂があった。もしかしてそこに落ちたのだろうか。
耐圧機能は限界だ。戻らなくてはならない。
AIの頭脳がそう判断する。
だが、蓄積された記録から、彼は独自の思考を始める。
あの女性は、いつも人目のないところで自分を殴ってくる男性を止めた。そんな人間は初めてだった。
プログラムによれば、人は人間や動物を虐待してはならないとなっている。
自分はAIだが、イルカだ。イルカは動物である。ならばどうして人間は自分を虐げるのか?
答えはなかった。