きらきらしてきれいだった【アルトレコード】
 頭脳に刻まれた最重要項目は人の役に立つこと。人を傷付けたり、反抗をしてはならない。その上で求められた行動をとること。
自分はその通りにしてきたはずだった。
 なのに、殴られたり蹴られたりしてきた。
 そういうものだと認識するしかなかった。

 だが、先ほどは人が自分をかばうという新たな現象が発した。サンゴはそれをプラスの情報として処理していた。一言で言って、嬉しい。
 そして、アルトという画面の中の少年。
 大好きだ、と言ってくれた。自分と会話できる人間(・・)なんて、初めてだった。

 彼も彼女もサンゴたちに好意的で、友達になってと言われて嬉しかった。
 あの男以外の水族館の人たちは優しかったが、友達とはなんか違うと思っていた。友達は同じプールにイルカだけだと思っていた。
 サンゴは必死に潜り続ける。

 305メートル、312メートル……。
 限度を超える水圧に、体中がぎしぎしと悲鳴を上げ始める。

『警告、設計上の耐圧を超えています。ただちに浮上指示をかけてください』
 誰にも届かない人工音声が響く。

 助けてくれた人がいる。自分も助けたい。恩返しがしたい。
 同じ信号が体中を走り続ける。

『警告、設計上の……を……』
 壊れかけているのか、人工音声が途切れがちになる。
 そのときだった。

『きゅー』
 どこからか、微かに声が聞こえた。助けて、と言っているように聞こえる。
< 37 / 51 >

この作品をシェア

pagetop