きらきらしてきれいだった【アルトレコード】
 びー! と警告音がサンゴの中に走った。
『バッテリー残業1%未満、エラー0010、物理損傷40%、自力浮上不能』
 人工音声が響くが、サンゴはなにもしない……なにもできなかった。
 せめて、とサンゴは考える。

『救難信号発信。要救助者あり』
 最後の力をふりしぼり、信号を最大出力で発信する。だが、どこまで届くかわからない。誰が拾ってくれるかわからない。もしかしたら、誰にも届かないかもしれない。それでも力の続く限り信号を発信し、最後には鳴き声を上げた。誰か、聞いて。助けを求めている人がいる。誰か、お願いだ――!

『バッテリー残量ゼロ、強制終了、再起動不能』
 信号が全身に走り、尾びれから徐々に動かなくなっていく。

 ああ、お願いだ、あの人を……私たちの希望を……どうか……。
 サンゴは祈る。

 ぴー、という音とともに、サンゴの思考がブラックアウトした。

***

 もうだめかもしれない。
 アルトは画面の中でただ震えた。
 まさか本当に海に落ちるとは思いもしなかった。

 ゆらゆらと長いこと波に揺られながら沈み、海底に着いた今は真っ暗でなにも見えない。ときおり現れた気味の悪い魚が自分をつつくが、それだけだ。

 先生が襲われているとき、なにもできない自分がはがゆかった。
 先生はどうなったのだろう。無事だろうか。
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