きらきらしてきれいだった【アルトレコード】
 絶望しかかったとき、あることに気が付いた。
「もし先生も海に落ちていたら……」
 アルトは真っ青になった。
 だったら、先生だって助けに来られる状況ではないはずだ。
 先生は泳げると言ってはいたが、今は自信がないとも言っていた。

「ぼくが助けにいかないと! だけど、どうしたら……」
 アルトは必死に考え始める。
 解決策を求めてネットにつなげようとしたが、無理だった。水中では電波が届かない、と北斗が言っていたのを思い出す。

 アルトは手持ちの海に関する情報をサーチした。
 海……波……生物……イルカ……。
 通り過ぎようとしたその単語で、アルトの思考は立ち止まる。

 イルカはコミュニケーションをとる生物だ。
 海中でも意思疎通ができる。深いところまで泳げる。
 アルトはイルカの言語のアプリを持っているし、それを使ってのコミュニケーションに成功している。

 アルトはイルカのアプリを使って音を再生した。
 ぴー! ぴいぃー、きゅいぃ!
 ホイッスルに似たその音を、何度も鳴らし続ける。

 助けて、ぼくはここにいるよ。
 その信号だけを流し続ける。
 端末のバッテリーが過負荷となり、すごい勢いで減っていく。

 が、今現在の唯一の希望がこれだ。やめるわけにはいかない。
 もっと時間を置くべきか、鳴らし続けるか。
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