きらきらしてきれいだった【アルトレコード】
「検査は終わったから船を出してくれ。点検に来た先生、船酔いが悪化してふらふらなんだ。すぐに帰らせてあげたい」
「はいよ」
 船長は気の良い返事をしてエンジンをかける。

「そういや、さっきなんか落ちる音がしなかったか?」
 念のため、という口調で船長がたずねる。
「またイルカがジャンプしていたから、それかな」
「ああ、イルカね」
 呑気に答え、船長は船をスタートさせた。

 雄介はにやりと笑って操縦室を出る。
 あとは大自然が当然の帰結を見せてくれる。適当なところで研究所の先生が落ちた、と騒げばいい。

 いや、このまま昼寝でもしよう。寝ている間に先生が海に落ちたようだ。そう説明すれば自分が見捨てたなんてバレない。あんな海の真ん中で、救助がくるとも思えない。録画したとかいう端末は海底だ。拾いに行くことなんてできやしない。

 そうしてすぐに眠りにつく。
 だから気が付かなかった。
 サンゴがいなくなっていることに。
 サンゴからの声を、残りのAIイルカが拾ったことに。

『救難信号確認。救助に向かいます』
 人工音声が響き、三頭のAIイルカは漁船から離脱して沖へと向かう。

 彼らが受け取ったのは、サンゴから発せられた、最後の鳴き声だった。
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