君が隠した光
3 真実の手紙
夏の終わり、蝉の声が遠ざかる頃。
鈴馬は、凛の訃報を聞いた。
「脳萎縮症による合併症で…」
その言葉が、耳の奥で何度も反響する。
「…そんな病気、聞いたことない…」
頭が真っ白になった。
涙も出なかった。
ただ、現実が遠く感じた。
数日後、凛の母が鈴馬の家を訪れた。
手には、白い封筒。
「凛が…あなたに渡してほしいって。亡くなる前に、私に託してくれたの」
震える手で、鈴馬はそれを受け取った。
部屋に戻り、机に座る。
封筒を開けると、そこには凛の手書きの手紙が入っていた。
見慣れた文字。
少しだけ揺れていて、でも、確かに凛のものだった。
鈴馬へ
この手紙を読んでいる頃、私はもうこの世界にはいないと思う。 それでも、どうしても伝えたかったことがある。
まずは、ごめんね。 あの日、突然別れを告げて、理由も言わずに去ってしまって。 鈴馬の顔を見て、泣きそうになった。 本当は、ずっと一緒にいたかった。 でも、私は「のうしゅく」っていう病気にかかっていた。 脳が少しずつ縮んでいく、原因不明の難病。
中1の春、最初の診断を受けたとき、私は何も理解できなかった。 「余命は2ヶ月です」って言われたときも、現実じゃないみたいだった。
でも、鈴馬と過ごす毎日は、本当に楽しくて、幸せで、 病気のことなんて忘れてしまいそうだった。 君の笑顔が、私の世界を明るくしてくれた。
放課後に一緒に歩いた道、文化祭で撮った写真、 君がくれた手紙、私がこっそり録音した君の声。 どれも、私の宝物だった。
だからこそ、君には言えなかった。 私が死ぬなんて、君に背負わせたくなかった。 君には、未来がある。 私の病気が、その未来を曇らせることだけは、絶対にしたくなかった。
別れを選んだのは、私のわがままかもしれない。 でも、君のことが大切だったからこそ、 君の人生から、私を消すことを選んだ。
それでも、最後まで、君のことが好きだった。 好きで、好きで、どうしようもなかった。
病院のベッドで、君との写真を見ながら、 「ああ、私の人生は幸せだったな」って思えた。
鈴馬。 私がいなくなっても、君には笑っていてほしい。 君には、夢を見てほしい。 君には、誰かを愛してほしい。
そして、時々でいいから、私のことを思い出してくれたら嬉しい。
最後に、ありがとう。 君と出会えて、君に恋して、君と過ごせて、 私は世界一幸せな女の子だった。
生きて。笑って。私の分まで。
私がいなくなっても、私の言葉が君の中に残ってくれたら、それだけで私は生きてるのと同じだと思える
かぶりんより
手紙を読み終えた瞬間、鈴馬は声を上げて泣いた。
涙が止まらなかった。
「なんで…なんで言ってくれなかったんだよ…」
机に突っ伏し、何度も名前を呼んだ。
「凛…凛…!」
その夜、鈴馬は凛との思い出をひとつひとつ思い返した。
笑い合った日々、手をつないだ帰り道、文化祭の写真。
すべてが、彼女の“命の記録”だった。
そして、鈴馬は決めた。
「俺は…この病気を知りたい。凛が苦しんだ理由を、誰かがもう苦しまなくて済むように」
彼はパソコンを開き、「脳萎縮症」の情報を探し始めた。
医学の道なんて考えたこともなかった。
でも今は、凛の言葉が背中を押してくれる。
「生きて。笑って。私の分まで」
その言葉が、鈴馬の胸に灯をともした。
鈴馬は、凛の訃報を聞いた。
「脳萎縮症による合併症で…」
その言葉が、耳の奥で何度も反響する。
「…そんな病気、聞いたことない…」
頭が真っ白になった。
涙も出なかった。
ただ、現実が遠く感じた。
数日後、凛の母が鈴馬の家を訪れた。
手には、白い封筒。
「凛が…あなたに渡してほしいって。亡くなる前に、私に託してくれたの」
震える手で、鈴馬はそれを受け取った。
部屋に戻り、机に座る。
封筒を開けると、そこには凛の手書きの手紙が入っていた。
見慣れた文字。
少しだけ揺れていて、でも、確かに凛のものだった。
鈴馬へ
この手紙を読んでいる頃、私はもうこの世界にはいないと思う。 それでも、どうしても伝えたかったことがある。
まずは、ごめんね。 あの日、突然別れを告げて、理由も言わずに去ってしまって。 鈴馬の顔を見て、泣きそうになった。 本当は、ずっと一緒にいたかった。 でも、私は「のうしゅく」っていう病気にかかっていた。 脳が少しずつ縮んでいく、原因不明の難病。
中1の春、最初の診断を受けたとき、私は何も理解できなかった。 「余命は2ヶ月です」って言われたときも、現実じゃないみたいだった。
でも、鈴馬と過ごす毎日は、本当に楽しくて、幸せで、 病気のことなんて忘れてしまいそうだった。 君の笑顔が、私の世界を明るくしてくれた。
放課後に一緒に歩いた道、文化祭で撮った写真、 君がくれた手紙、私がこっそり録音した君の声。 どれも、私の宝物だった。
だからこそ、君には言えなかった。 私が死ぬなんて、君に背負わせたくなかった。 君には、未来がある。 私の病気が、その未来を曇らせることだけは、絶対にしたくなかった。
別れを選んだのは、私のわがままかもしれない。 でも、君のことが大切だったからこそ、 君の人生から、私を消すことを選んだ。
それでも、最後まで、君のことが好きだった。 好きで、好きで、どうしようもなかった。
病院のベッドで、君との写真を見ながら、 「ああ、私の人生は幸せだったな」って思えた。
鈴馬。 私がいなくなっても、君には笑っていてほしい。 君には、夢を見てほしい。 君には、誰かを愛してほしい。
そして、時々でいいから、私のことを思い出してくれたら嬉しい。
最後に、ありがとう。 君と出会えて、君に恋して、君と過ごせて、 私は世界一幸せな女の子だった。
生きて。笑って。私の分まで。
私がいなくなっても、私の言葉が君の中に残ってくれたら、それだけで私は生きてるのと同じだと思える
かぶりんより
手紙を読み終えた瞬間、鈴馬は声を上げて泣いた。
涙が止まらなかった。
「なんで…なんで言ってくれなかったんだよ…」
机に突っ伏し、何度も名前を呼んだ。
「凛…凛…!」
その夜、鈴馬は凛との思い出をひとつひとつ思い返した。
笑い合った日々、手をつないだ帰り道、文化祭の写真。
すべてが、彼女の“命の記録”だった。
そして、鈴馬は決めた。
「俺は…この病気を知りたい。凛が苦しんだ理由を、誰かがもう苦しまなくて済むように」
彼はパソコンを開き、「脳萎縮症」の情報を探し始めた。
医学の道なんて考えたこともなかった。
でも今は、凛の言葉が背中を押してくれる。
「生きて。笑って。私の分まで」
その言葉が、鈴馬の胸に灯をともした。