保健室の"お姫様"
小さい頃からの夢
「あ、姫崎さんおはよう」
朝日の差し込む保健室。新鮮な空気を感じることができるこの時間が私は大好き。
「おはようございますっ…!」
保健室の先生からの微笑みに応えて、そっと定位置のベッドに座った。
私、姫崎結愛。
小さい頃から体が弱くても、こうしてあまり問題なく成長し、今では中学1年生。
いつ体調を崩しても対応できる保健室に登校していて、先生とはそれなりの仲にもなった。
他のみんなとはきっと同じではないけれど、私は私なりに学校生活を楽しんでいる。
「今日は先生、出張で途中からいないんだけど…、姫崎さん、保健室の事だいぶ分かるものね。」
先生のその言葉に、小さく頷く。
あんまり、自信はないけど…、他の子よりはきっと保健室のことも分かると思う。
私の反応に、ほっとしたような表情を見せた先生は
「よかった。体調が悪くなったらいつでも電話するのよ。」
と言う。
そう、実は私は、先生の携帯の番号を知っている。
もちろん業務用の番号だとは思うけれど…。
何かあった時、先生が傍にいない時掛けてね、と番号を教えてもらった。
「姫崎さんのこと心配だわ〜…」
と眉を八の字にする先生は本当に生徒思いのいい人。
そんな先生に思ってもらって、私は人に恵まれているなぁと深く感じる。
「大丈夫ですっ、ここ最近は全然倒れてませんし…!!」
そう言ってぎゅっと拳を握ると、まだ不安そうな表情を見せながらも、先生はパソコンをカタカタと叩き始めた。
その様子を見て、私もベッドに寝転ぶ。
今日も、いつもと同じように終わるのかな…。
もちろん先生と過ごすのは楽しいし、全然それを負荷に思ったことはない。
だけど、実は私には密かな夢がある。
それは誰にも言ったことがない、「青春したい」という夢。
他のみんなと同じように学校生活を送ってみたい。
帰り道に買い食いとかしたいし、放課後のお菓子パーティなんかもしてみたいなぁ…。
なんて思いながら、段々瞼が落ちてきて、まどろみの中に消えていった。