満月に引き寄せられた恋〜雪花姫とツンデレ副社長〜
結婚を考えていた彼は、酒酔い運転の被害に遭い、亡くなった──私を庇って。それだけでも、地の底に突き落とされるような出来事だったのに……。運転していたのは、私の“親友”だった人物だった。
この悲劇のあと、周囲は私に腫れ物を触るように接してきた。気遣いだとわかっていたけれど、それでも私は息苦しさを感じ、次第に自分を見失っていった。
誤解しないで。みんなが優しかったことは、ちゃんとわかってる。でも、あのときの私は、自分の居場所を見失い、深い疎外感に包まれていた。
そんな中で、私は“楽になりたかった”。
すでに大切なものは失っていた。ならば、いっそすべてを手放して、新しく生き直したいと……。そう思った。
今ならはっきりわかる。
誰かと関われば、また失うかもしれない。
だからもう、誰にも近づかない。
そうすれば、もう何も失わずに済む。
思い出の品は、ほとんど手放した。
……、ただひとつ、このスケッチブックだけは、手放せなかった。最後のページに描いた、亡くなった彼の笑顔だけは。
事故のあと半年ほどは、このページを見ては泣いていた。どうして自分じゃなかったのか。そんな思いに押しつぶされそうな日々だった。
やがて、感情は麻痺していった。喜びも、楽しさも、何も感じなくなった。
日本へ帰国する日。空港まで見送りに来てくれた義父が、静かに言ってくれた言葉を今も覚えている。
「逃げることは悪いことじゃない。彩巴が決めたことだから、私も君のお母さんもサポートするよ。すべてを手放して旅立つなら、君の中の罪悪感も、『幸せになってはいけない』という思いも、ここに置いていきなさい」
日本に戻ってから、わずか1カ月。信じられないスピードで、すべてが動き出した。
三度目の再会、そして就職。
帰国前日、ハイキング中に私を助けてくれた“熊男”。その夜、レッドロックの野外ホールで開かれていたストロベリームーンの鑑賞イベントでも、彼の姿を見かけた。少し離れた場所に座って、静かに夜空を見上げていた。
あのとき彼は、熊男は、月に何を願ったんだろう?
私は……。
自分の居場所が見つかりますように。
いつかまた、誰かを愛せますように。
そして、そんな自分を許せますように。
この悲劇のあと、周囲は私に腫れ物を触るように接してきた。気遣いだとわかっていたけれど、それでも私は息苦しさを感じ、次第に自分を見失っていった。
誤解しないで。みんなが優しかったことは、ちゃんとわかってる。でも、あのときの私は、自分の居場所を見失い、深い疎外感に包まれていた。
そんな中で、私は“楽になりたかった”。
すでに大切なものは失っていた。ならば、いっそすべてを手放して、新しく生き直したいと……。そう思った。
今ならはっきりわかる。
誰かと関われば、また失うかもしれない。
だからもう、誰にも近づかない。
そうすれば、もう何も失わずに済む。
思い出の品は、ほとんど手放した。
……、ただひとつ、このスケッチブックだけは、手放せなかった。最後のページに描いた、亡くなった彼の笑顔だけは。
事故のあと半年ほどは、このページを見ては泣いていた。どうして自分じゃなかったのか。そんな思いに押しつぶされそうな日々だった。
やがて、感情は麻痺していった。喜びも、楽しさも、何も感じなくなった。
日本へ帰国する日。空港まで見送りに来てくれた義父が、静かに言ってくれた言葉を今も覚えている。
「逃げることは悪いことじゃない。彩巴が決めたことだから、私も君のお母さんもサポートするよ。すべてを手放して旅立つなら、君の中の罪悪感も、『幸せになってはいけない』という思いも、ここに置いていきなさい」
日本に戻ってから、わずか1カ月。信じられないスピードで、すべてが動き出した。
三度目の再会、そして就職。
帰国前日、ハイキング中に私を助けてくれた“熊男”。その夜、レッドロックの野外ホールで開かれていたストロベリームーンの鑑賞イベントでも、彼の姿を見かけた。少し離れた場所に座って、静かに夜空を見上げていた。
あのとき彼は、熊男は、月に何を願ったんだろう?
私は……。
自分の居場所が見つかりますように。
いつかまた、誰かを愛せますように。
そして、そんな自分を許せますように。