私の世界
第三話
次の日の朝、私は早めに学校に着いて、すぐにミツキさんの席を確認した。
やっぱり空いてる。五日目だった。もう一週間近くも学校に来てないことになる。
これは明らかに異常事態だと思うのに、周りの反応は相変わらず薄かった。
私は自分の席に座りながら、昨日送ったメッセージのことを考えてた。
既読はついたのに、返事は来てない。もしかして迷惑だったのかもしれない。
でも助けを求めるボイスメッセージを送ってきたのはミツキさんの方だ。
何らかの反応があってもいいはずなのに。
朝の準備をしながら、私はクラスメイトたちの様子を観察した。
誰もミツキさんの空席を気にしてない。まるでその席に人が座ってたことすら忘れてるみたいだった。
「おはよう」
友達がやってきた。いつものように明るい挨拶。
私も笑顔で返したけど、心はどこか上の空だった。ミツキさんのことばかり考えてしまう。
朝のホームルームが終わって、一時間目の授業が始まった。
私は授業に集中しようとしたけど、どうしてもミツキさんのことが頭から離れない。
教科書の文字が目に入ってこない。先生の声も遠くから聞こえてくるような感じがする。
数学の時間、先生が黒板に書いた図形を見ながら、私は昨夜見たミツキさんの投稿のことを思い出してた。
あの線路の画像。現実にはありえないような、不自然な雰囲気があった。
休み時間になると、私はスマホをこっそり確認した。
メッセージの返事はまだ来てない。でもSNSアプリに新しい投稿があった。
今度は駅のホームの画像だった。
私は、その駅を見たことがない。ただ、私がイメージする典型的な田舎の駅舎のように見えた。そのホーム自体も古びてて、コンクリートにひび割れが走ってる。
その空は相変わらず紫がかった色をしていた。だからかな?その駅舎にある薄暗い照明が暗い雰囲気をさらに暗くしていた。
駅の看板も写ってたけど、小さい文字ぼやけて読めない。でもその形から、なんとなく『きさらぎ』という文字に見えるような気もする。
誰もいない静寂の中で、そこは現実の駅とは思えないほど、すべてが不気味に感じられた。
まるで夢の中の駅のようだ。
投稿の文章を読んで、私は息を止めた。
『きさらぎ駅にいます。帰りたいけれど、帰り方が分からない』
きさらぎ駅。
ということは、ミツキさんは本当にそこにいるということなんだろうか。
これって本当に実在する場所なんだろうか。
でも、ミツキさんの文章は切実だった。
とても嘘をついてるようには思えない。本当に困ってるような感じがする。
私は慌てて周りを見回した。誰も私のスマホを見てない。クラスメイトたちは普通に過ごしてる。
彼らには、この異常事態が見えてない。
それがまた、今の状況を物語っているようで何か悲しく思えた。
◇
昼休みになって、私は一人で中庭のベンチに向かった。
友達には「ちょっと用事がある」と言って。静かな場所で、私はミツキさんにもう一度メッセージを送ろうと思った。
中庭は人通りが少なくて、木陰のベンチに座ると落ち着いて考えることができる。私はスマホを取り出して、画面を見つめた。
『大丈夫ですか?』
メッセージを打って送信する。すぐに既読がついた。でもやっぱり返事は来ない。
なぜ返事をくれないんだろう。私のメッセージが届いてないんだろうか。それとも返事ができない状況にいるんだろうか。
私は焦り始めた。もう一度ミツキさんの投稿を見直していると、あの不気味な駅のホームの画像が目に入る。本当にこんな場所があるんだろうか。
ミツキさんは本当に困ってるはずなのに、私は何もできない。
どうしたらいいか分からない。中学生の私には、この状況を解決する力がない。
でも誰かに相談しようにも、この話を信じてくれる人がいるかな。
そんなことを考えていた時、背後から声がした。
「何見てるの?すごく真剣な顔してるけど」
振り返ると、真鍋サヤカさんが立ってた。サヤカさんは私たちのクラスで一番人気の人。
可愛くて、おしゃれで、いつも注目の中心にいる。明るい髪色と華やかなメイクが特徴的で、常に流行の最先端をいくファッションに身を包んでる。
手にはお弁当を持ってて、どうやら食べる場所を探してたみたいだった。
「あ、こんにちは」
私は慌てて挨拶した。サヤカさんと話すなんて珍しい。急いでスマホを閉じようとしたけど、彼女の視線がスマホの画面に向いてるのに気がついた。
「ちょっと待って、今の画像って何?すごく変わってなかった?」
サヤカさんは興味深そうに私を見つめてる。その視線がなんとなく鋭くて、私は居心地が悪くなった。でも彼女の好奇心は本物のようだった。
「え、特に何も」
「嘘でしょ?あの紫っぽい空の画像、明らかに普通じゃないよ。どこで撮ったの?」
私は困った。ミツキさんのことを話すべきかどうか迷った。
サヤカさんは人気者だから、きっと多くの人とつながりがある。もしかしたら何か助けになることを知ってるかもしれない。
でもミツキさんのプライベートなことを、勝手に他の人に話していいものかな。彼女の同意を得てないのに、個人的な情報を公開するのは適切じゃないような気がする。
「あの、如月さんのこと、知ってます?」
私は思い切って口を開いた。サヤカさんの表情が変わった。興味深そうな表情から、少し計算的な表情に変わったような気がする。
「如月?ああ、あの地味な子ね。どうしたの?」
地味な子。その言い方に、私は少し引っかかった。でもサヤカさんにとって、ミツキさんはその程度の存在なのかもしれない。
「最近学校に来てないでしょ?ちょっと心配で」
サヤカさんはクスッと笑った。その笑い方に、何か引っかかるものを感じた。まるで私の心配を面白がってるような笑い方だった。
「心配?あの子のこと?」
「はい、何かあったのかなって」
「優しいのね。でもあの子のことなんて気にしなくていいのに」
私は少しムッとした。どうしてみんな、そんな風に言うんだろう。ミツキさんだって、同じクラスメイトなのに。困ってる人がいたら、心配するのは当然じゃないの?
「でもクラスメイトですし」
「そうね。で、さっきの画像と何か関係があるの?」
サヤカさんの声に、なぜか興味深そうな響きがあった。まるで何か面白い話を期待してるような感じだった。私は迷ったけど、結局話してしまった。誰かに相談したかったのかもしれない。
「メッセージが来たんです。助けを求めるような」
「メッセージ?面白そう。どんな?」
面白そう。その言葉に、私は違和感を覚えた。助けを求めるメッセージが面白いって、どういうことだろう。でもサヤカさんは本当に興味深そうな表情をしてた。
私はミツキさんのボイスメッセージのことを簡単に説明した。きさらぎ駅のこと、変な画像のこと。サヤカさんは最初笑ってたけど、話を聞いてるうちに表情が変わった。
「それ、すごく面白いじゃない」
「面白いって……」
「だって普通じゃないでしょ?きさらぎ駅なんて、都市伝説みたいじゃない」
私は困惑した。面白いという言葉が、なんとなく軽薄に聞こえる。ミツキさんの苦しみを、エンターテイメントのように扱われてる気がした。
「でもミツキさんが困ってるかもしれないし」
「そうね。で、どうするつもり?」
私は答えに詰まった。正直、どうしていいか分からない。中学生の私たちに、何ができるっていうんだろう。
「分からないです。でも何かしてあげたくて」
サヤカさんは私をじっと見つめた。その目に、何か計算してるような表情が浮かんだ。まるで私を値踏みしてるような感じがする。
「ねえ、私が協力してあげる」
「え?」
私は驚いた。サヤカさんが協力してくれるなんて思わなかった。
「その如月さんのこと。私も気になってきた。一緒に調べない?」
人気者の彼女が、地味なミツキさんのことに関心を示してくれるなんて。でもなぜ急に協力すると言い出したんだろう。
「本当ですか?」
「うん。でも条件があるの」
「条件?」
「何か分かったら、全部私に教えて。約束できる?あと、その子のアカウントも見せてもらえる?」
私は少し迷った。でも一人でやるより、サヤカさんみたいに人気のある人が協力してくれた方がいいかもしれない。
たしかに、彼女なら、私が思いつかないような解決策を知ってるかもしれない。
それにサヤカさんには多くの友人がいる。もしかしたらその中に、ミツキさんの状況について何か知ってる人がいるかもしれない。
「分かりました。お願いします」
私はスマホを操作して、ミツキさんのアカウントを表示した。サヤカさんは興味深そうに画面を見つめ、すぐに自分のスマホでアカウント名を検索している。
「みつき……見つけた」
サヤカさんは投稿された画像を一つ一つ確認していく。その表情が、だんだんと興奮したものに変わっていった。
「これ、本当にすごいわね。こんな色の空、見たことない」
そして、サヤカさんは自分のスマホを操作して、何かを私に見せた。
「私のアカウントもフォローしてくれる?情報を共有しやすくなるから」
画面には、サヤカさんのアカウントが表示されてた。フォロワーが数千人もいる人気アカウントだった。投稿も頻繁で、いつも多くの反応を集めてる。
「これで連絡も取りやすくなるし、何かあったらすぐに情報交換できるわ」
私は少し戸惑いながらも、サヤカさんのアカウントをフォローした。こんな人気者とつながれるなんて思わなかった。
サヤカさんは満足そうに微笑んだ。でもその笑顔には何か裏があるような気がした。
「よろしく。これから面白くなりそうね」
その言葉に、私は少しだけ違和感を覚えた。
「明日から本格的に始めましょう。楽しみね」
「はい、お願いします」
私はサヤカさんに頭を下げた。これでミツキさんを助けることができるかもしれない。一人では無力だった私に、強力な味方ができた。
でも心のどこかで小さな警告音が鳴ってた。なぜサヤカさんは、急に協力すると言い出したんだろうか?
きっと、彼女にとって、何かのメリットがあるからだろう。
サヤカさんの『面白そう』という言葉が、頭から離れなかった。
彼女にとって、ミツキさんの状況は興味深い話題なのかもしれない。
でもそれでいいんだろうか?
けれど、間違いなく、私一人では何もできない。
そうだ、サヤカさんの力を借りて、ミツキさんを助けよう。
きっとミツキさんを助ける方法が見つかるはずだ。
私はそう考えることにして、ようやく眠りについた。
やっぱり空いてる。五日目だった。もう一週間近くも学校に来てないことになる。
これは明らかに異常事態だと思うのに、周りの反応は相変わらず薄かった。
私は自分の席に座りながら、昨日送ったメッセージのことを考えてた。
既読はついたのに、返事は来てない。もしかして迷惑だったのかもしれない。
でも助けを求めるボイスメッセージを送ってきたのはミツキさんの方だ。
何らかの反応があってもいいはずなのに。
朝の準備をしながら、私はクラスメイトたちの様子を観察した。
誰もミツキさんの空席を気にしてない。まるでその席に人が座ってたことすら忘れてるみたいだった。
「おはよう」
友達がやってきた。いつものように明るい挨拶。
私も笑顔で返したけど、心はどこか上の空だった。ミツキさんのことばかり考えてしまう。
朝のホームルームが終わって、一時間目の授業が始まった。
私は授業に集中しようとしたけど、どうしてもミツキさんのことが頭から離れない。
教科書の文字が目に入ってこない。先生の声も遠くから聞こえてくるような感じがする。
数学の時間、先生が黒板に書いた図形を見ながら、私は昨夜見たミツキさんの投稿のことを思い出してた。
あの線路の画像。現実にはありえないような、不自然な雰囲気があった。
休み時間になると、私はスマホをこっそり確認した。
メッセージの返事はまだ来てない。でもSNSアプリに新しい投稿があった。
今度は駅のホームの画像だった。
私は、その駅を見たことがない。ただ、私がイメージする典型的な田舎の駅舎のように見えた。そのホーム自体も古びてて、コンクリートにひび割れが走ってる。
その空は相変わらず紫がかった色をしていた。だからかな?その駅舎にある薄暗い照明が暗い雰囲気をさらに暗くしていた。
駅の看板も写ってたけど、小さい文字ぼやけて読めない。でもその形から、なんとなく『きさらぎ』という文字に見えるような気もする。
誰もいない静寂の中で、そこは現実の駅とは思えないほど、すべてが不気味に感じられた。
まるで夢の中の駅のようだ。
投稿の文章を読んで、私は息を止めた。
『きさらぎ駅にいます。帰りたいけれど、帰り方が分からない』
きさらぎ駅。
ということは、ミツキさんは本当にそこにいるということなんだろうか。
これって本当に実在する場所なんだろうか。
でも、ミツキさんの文章は切実だった。
とても嘘をついてるようには思えない。本当に困ってるような感じがする。
私は慌てて周りを見回した。誰も私のスマホを見てない。クラスメイトたちは普通に過ごしてる。
彼らには、この異常事態が見えてない。
それがまた、今の状況を物語っているようで何か悲しく思えた。
◇
昼休みになって、私は一人で中庭のベンチに向かった。
友達には「ちょっと用事がある」と言って。静かな場所で、私はミツキさんにもう一度メッセージを送ろうと思った。
中庭は人通りが少なくて、木陰のベンチに座ると落ち着いて考えることができる。私はスマホを取り出して、画面を見つめた。
『大丈夫ですか?』
メッセージを打って送信する。すぐに既読がついた。でもやっぱり返事は来ない。
なぜ返事をくれないんだろう。私のメッセージが届いてないんだろうか。それとも返事ができない状況にいるんだろうか。
私は焦り始めた。もう一度ミツキさんの投稿を見直していると、あの不気味な駅のホームの画像が目に入る。本当にこんな場所があるんだろうか。
ミツキさんは本当に困ってるはずなのに、私は何もできない。
どうしたらいいか分からない。中学生の私には、この状況を解決する力がない。
でも誰かに相談しようにも、この話を信じてくれる人がいるかな。
そんなことを考えていた時、背後から声がした。
「何見てるの?すごく真剣な顔してるけど」
振り返ると、真鍋サヤカさんが立ってた。サヤカさんは私たちのクラスで一番人気の人。
可愛くて、おしゃれで、いつも注目の中心にいる。明るい髪色と華やかなメイクが特徴的で、常に流行の最先端をいくファッションに身を包んでる。
手にはお弁当を持ってて、どうやら食べる場所を探してたみたいだった。
「あ、こんにちは」
私は慌てて挨拶した。サヤカさんと話すなんて珍しい。急いでスマホを閉じようとしたけど、彼女の視線がスマホの画面に向いてるのに気がついた。
「ちょっと待って、今の画像って何?すごく変わってなかった?」
サヤカさんは興味深そうに私を見つめてる。その視線がなんとなく鋭くて、私は居心地が悪くなった。でも彼女の好奇心は本物のようだった。
「え、特に何も」
「嘘でしょ?あの紫っぽい空の画像、明らかに普通じゃないよ。どこで撮ったの?」
私は困った。ミツキさんのことを話すべきかどうか迷った。
サヤカさんは人気者だから、きっと多くの人とつながりがある。もしかしたら何か助けになることを知ってるかもしれない。
でもミツキさんのプライベートなことを、勝手に他の人に話していいものかな。彼女の同意を得てないのに、個人的な情報を公開するのは適切じゃないような気がする。
「あの、如月さんのこと、知ってます?」
私は思い切って口を開いた。サヤカさんの表情が変わった。興味深そうな表情から、少し計算的な表情に変わったような気がする。
「如月?ああ、あの地味な子ね。どうしたの?」
地味な子。その言い方に、私は少し引っかかった。でもサヤカさんにとって、ミツキさんはその程度の存在なのかもしれない。
「最近学校に来てないでしょ?ちょっと心配で」
サヤカさんはクスッと笑った。その笑い方に、何か引っかかるものを感じた。まるで私の心配を面白がってるような笑い方だった。
「心配?あの子のこと?」
「はい、何かあったのかなって」
「優しいのね。でもあの子のことなんて気にしなくていいのに」
私は少しムッとした。どうしてみんな、そんな風に言うんだろう。ミツキさんだって、同じクラスメイトなのに。困ってる人がいたら、心配するのは当然じゃないの?
「でもクラスメイトですし」
「そうね。で、さっきの画像と何か関係があるの?」
サヤカさんの声に、なぜか興味深そうな響きがあった。まるで何か面白い話を期待してるような感じだった。私は迷ったけど、結局話してしまった。誰かに相談したかったのかもしれない。
「メッセージが来たんです。助けを求めるような」
「メッセージ?面白そう。どんな?」
面白そう。その言葉に、私は違和感を覚えた。助けを求めるメッセージが面白いって、どういうことだろう。でもサヤカさんは本当に興味深そうな表情をしてた。
私はミツキさんのボイスメッセージのことを簡単に説明した。きさらぎ駅のこと、変な画像のこと。サヤカさんは最初笑ってたけど、話を聞いてるうちに表情が変わった。
「それ、すごく面白いじゃない」
「面白いって……」
「だって普通じゃないでしょ?きさらぎ駅なんて、都市伝説みたいじゃない」
私は困惑した。面白いという言葉が、なんとなく軽薄に聞こえる。ミツキさんの苦しみを、エンターテイメントのように扱われてる気がした。
「でもミツキさんが困ってるかもしれないし」
「そうね。で、どうするつもり?」
私は答えに詰まった。正直、どうしていいか分からない。中学生の私たちに、何ができるっていうんだろう。
「分からないです。でも何かしてあげたくて」
サヤカさんは私をじっと見つめた。その目に、何か計算してるような表情が浮かんだ。まるで私を値踏みしてるような感じがする。
「ねえ、私が協力してあげる」
「え?」
私は驚いた。サヤカさんが協力してくれるなんて思わなかった。
「その如月さんのこと。私も気になってきた。一緒に調べない?」
人気者の彼女が、地味なミツキさんのことに関心を示してくれるなんて。でもなぜ急に協力すると言い出したんだろう。
「本当ですか?」
「うん。でも条件があるの」
「条件?」
「何か分かったら、全部私に教えて。約束できる?あと、その子のアカウントも見せてもらえる?」
私は少し迷った。でも一人でやるより、サヤカさんみたいに人気のある人が協力してくれた方がいいかもしれない。
たしかに、彼女なら、私が思いつかないような解決策を知ってるかもしれない。
それにサヤカさんには多くの友人がいる。もしかしたらその中に、ミツキさんの状況について何か知ってる人がいるかもしれない。
「分かりました。お願いします」
私はスマホを操作して、ミツキさんのアカウントを表示した。サヤカさんは興味深そうに画面を見つめ、すぐに自分のスマホでアカウント名を検索している。
「みつき……見つけた」
サヤカさんは投稿された画像を一つ一つ確認していく。その表情が、だんだんと興奮したものに変わっていった。
「これ、本当にすごいわね。こんな色の空、見たことない」
そして、サヤカさんは自分のスマホを操作して、何かを私に見せた。
「私のアカウントもフォローしてくれる?情報を共有しやすくなるから」
画面には、サヤカさんのアカウントが表示されてた。フォロワーが数千人もいる人気アカウントだった。投稿も頻繁で、いつも多くの反応を集めてる。
「これで連絡も取りやすくなるし、何かあったらすぐに情報交換できるわ」
私は少し戸惑いながらも、サヤカさんのアカウントをフォローした。こんな人気者とつながれるなんて思わなかった。
サヤカさんは満足そうに微笑んだ。でもその笑顔には何か裏があるような気がした。
「よろしく。これから面白くなりそうね」
その言葉に、私は少しだけ違和感を覚えた。
「明日から本格的に始めましょう。楽しみね」
「はい、お願いします」
私はサヤカさんに頭を下げた。これでミツキさんを助けることができるかもしれない。一人では無力だった私に、強力な味方ができた。
でも心のどこかで小さな警告音が鳴ってた。なぜサヤカさんは、急に協力すると言い出したんだろうか?
きっと、彼女にとって、何かのメリットがあるからだろう。
サヤカさんの『面白そう』という言葉が、頭から離れなかった。
彼女にとって、ミツキさんの状況は興味深い話題なのかもしれない。
でもそれでいいんだろうか?
けれど、間違いなく、私一人では何もできない。
そうだ、サヤカさんの力を借りて、ミツキさんを助けよう。
きっとミツキさんを助ける方法が見つかるはずだ。
私はそう考えることにして、ようやく眠りについた。