私の世界
第四話
翌日の昼休みに、私たちは図書室の隅で落ち合った。
サヤカさんは自分の友達も一緒に連れてきてた。正直、こんなに多くの人に知られることになるとは思ってなかった。
図書室の奥の静かなエリアに、サヤカさんと二人の友達が座ってた。私は少し緊張しながら、彼女たちのテーブルに近づいた。
「で、昨日の話をしましょう。そういえば、昨日の夜、投稿があったわね」
サヤカさんはそう言ってきた。その彼女の座っている机の前にはスマホがあって、ミツキさんのアカウントが表示されていた。
「そうですね」
私がそう言うと、サヤカさんは画面をスクロールした。
「これよね。すごく不気味な駅の画像…」
サヤカさんの友達の一人が自分のスマホの画面を覗き込んだ。
どうやらミツキさんのアカウントは、サヤカさんの友人らに共有されているようだった。
「でも、これ本当かな?合成じゃないのかな?」
彼女の名前は知らないけど、いつもサヤカさんの周りにいる人が言った。
サヤカさんは画像をじっと見つめていた。
「この待合室みたいな建物、普通の駅にありそうなのに、なんで空がこんな色なのかしら」
もう一人の友達も口を挟んだ。
「この文章も変よね。『電車が来ない。いつまで待てばいいの』って」
サヤカさんは面白そうに笑った。
その笑い方が、なんとなく心に引っかかった。
まるでミツキさんの苦境を楽しんでるような表情だったから。
私は違和感を覚えたけど、何も言えなかった。
サヤカさんは私の味方で、私一人の力では、ミツキさんを助けることはできないのだから。
「なるほどね。で、あなた、メッセージは送ったの?」
「送ったけど、返事が来ないんです」
「そう。でも、既読はつくのよね?」
「はい」
サヤカさんは少し考える素振りを見せた。でもその考えてる表情も、どこか演技っぽく見えた。
まるで最初から答えを決めてるような感じだった。
「ねえ、これをもっと多くの人に見てもらったらどうかしら」
「え?」
私は困惑した。多くの人に見てもらうって、どういうことだろう。
「だって一人で悩んでても仕方ないでしょ?みんなで考えた方がいいアイデアが出るかもね」
私は迷った。ミツキさんのプライベートなことを、勝手に他の人に話していいものかな。
彼女の同意を得てないのに、本当にいいのかな、って思った。
「でもミツキさんの許可なしに」
「大丈夫よ。助けるためなんだから」
サヤカさんの言葉には正当性があった。
確かに助けるためなら仕方ない。多くの人が知れば、解決策を知ってる人がいるかもしれない。
でも本当にそれでいいんだろうか。
ミツキさんは、この状況を多くの人に知られることを望んでるんだろうか。
「どうやって?」
「簡単よ。SNSで発信するの。『クラスメイトが困ってる』って」
私は不安になった。
「でもそんな大げさに」
「大げさじゃないでしょ?実際に困ってるんだから」
サヤカさんは自分のスマホを指差した。
その画面にはミツキさんのアカウントが表示されてる。
「この画像、すごく印象的じゃない?きっとみんな興味を持つわ」
「ドラマチック?」
私は首をかしげた。印象的という言葉に、なんとなく違和感を覚えた。
これはミツキさんの苦しみなのに、まるで見世物のように扱われてる気がした。
「そう。もっとよく書けば、きっと多くの人が協力してくれるわ」
私は首をかしげた。よく書くって、どういうことだろう。事実をありのままに伝えればいいんじゃないかな。
「例えば『同じクラスの子が異世界に迷い込んでしまいました。みんなで助けませんか』みたいな感じ?」
サヤカさんの提案に、私は戸惑った。
それって事実と違うような気がするからだ。少なくともそこが異世界なんて、決まったわけじゃない。
「でも異世界って決まったわけでは…」
「でもこの画像を見てよ。普通の場所じゃないでしょ?」
確かにミツキさんの画像は現実離れしてる。でもそれを異世界と言い切っていいんだろうか。
でも、確かにサヤカさんの言うことも一理ある。あの画像は、明らかに普通の場所じゃない。もしかしたら本当に異世界のような場所なのかもしれない。
「どう?やってみない?」
サヤカさんの目が、期待に輝いてた。友達も同調するように頷いてる。
私は迷ったけど、結局うなずいた。ミツキさんを助けるためなら、多少の誇張は仕方がないかもしれない。
「分かりました。でも、嘘は書かないほうが…」
「もちろんよ。任せて」
サヤカさんは満足そうに微笑んだ。
でもその笑顔を見てると、なんとなく不安になった。
何かこう…、裏にあるような感じ、というのだろうか?
その日の放課後、私は家で宿題をしてた。
スマホが何度も通知音を立てるので、確認してみると、SNSアプリでたくさんの反応があった。
サヤカさんが何かを投稿したようだ。
サヤカさんが投稿した内容を見て、私は驚いた。
『同じクラスの如月ミツキさんが、謎の世界に迷い込んでしまいました。彼女から送られてくる画像には、この世のものとは思えない美しい場所が!でも、彼女はその世界から帰り方が分からず困ってます。みんなで知恵を出し合って、彼女を助けませんか?』
そして投稿には、ミツキさんのアカウントの画像がいくつかスクリーンショットで添付されてた。あの紫色の空の画像、線路の画像、そして、駅舎の画像。
謎の世界?美しい?
少なくとも、私はそんな風には思えなかった。
確かに画像は不思議だったけど、美しいという表現は適切かな?
それにミツキさんが困っているというより、何か冒険でもしているかのような感じで、何かモヤモヤしたものを感じた。
でも反応はすごかった。コメントがたくさんついてる。
『すごい!本当の話?』
『画像見せて!』
『都市伝説みたい』
『どうやって連絡取ってるの?』
私は慌ててサヤカさんにメッセージを送った。
『ちょっと、事実と違うような気がするんですが』
すぐに返事が来た。
『大丈夫よ。みんな興味を持ってくれてるじゃない。これでミツキさんを助けられるわ』
私は不安だったけど、確かにたくさんの人が関心を示してくれてる。
もしかして、この中に解決策を知ってる人がいるかもしれない。そう思うと、少し希望が湧いてきた。
その時、ミツキさんから新しい投稿があった。
今度は真っ暗な通路の画像。かすかに明かりが見えるけど、とても不気味だった。
まるで地下道のような場所だけど、普通の地下道とは明らかに違う。壁の質感や天井の高さが、現実のものとは思えない。
通路の奥に、ぼんやりとした光が見える。
でもその光は普通の電灯じゃないようだった。まるで蛍光色のような、不自然な青白い光だった。
『誰かいませんか。一人は怖いです』
その文章を読んで、私の胸が痛くなった。ミツキさんは本当に怖がってる。
一刻も早く助けてあげたい。そのためなら、多少の誇張も仕方がないのかもしれない。
私はサヤカさんに新しい投稿があったことを伝えた。すぐに返事が来た。
『見たわ!これは完璧じゃない!もっと話題になるわ』
話題になる?
私はちょっと違和感を覚えた。
私たちの目的は、ミツキさんを助けることのはず。話題になることが目的じゃないのだ。
しかし、確かにサヤカさんが言うように話題になれば、より多くの人が協力してくれるかもしれない。
だとすれば、それは悪いことじゃないよね。
そのように、私は自分に言い聞かせて、サヤカさんの行動を信じることにした。
夜遅くまで、私はミツキさんの投稿を見続けてた。
どの画像も現実離れしてて、まるで別の世界のもののようだ。でも彼女のメッセージからは、確実に恐怖と孤独感が伝わってきた。
サヤカさんは自分の友達も一緒に連れてきてた。正直、こんなに多くの人に知られることになるとは思ってなかった。
図書室の奥の静かなエリアに、サヤカさんと二人の友達が座ってた。私は少し緊張しながら、彼女たちのテーブルに近づいた。
「で、昨日の話をしましょう。そういえば、昨日の夜、投稿があったわね」
サヤカさんはそう言ってきた。その彼女の座っている机の前にはスマホがあって、ミツキさんのアカウントが表示されていた。
「そうですね」
私がそう言うと、サヤカさんは画面をスクロールした。
「これよね。すごく不気味な駅の画像…」
サヤカさんの友達の一人が自分のスマホの画面を覗き込んだ。
どうやらミツキさんのアカウントは、サヤカさんの友人らに共有されているようだった。
「でも、これ本当かな?合成じゃないのかな?」
彼女の名前は知らないけど、いつもサヤカさんの周りにいる人が言った。
サヤカさんは画像をじっと見つめていた。
「この待合室みたいな建物、普通の駅にありそうなのに、なんで空がこんな色なのかしら」
もう一人の友達も口を挟んだ。
「この文章も変よね。『電車が来ない。いつまで待てばいいの』って」
サヤカさんは面白そうに笑った。
その笑い方が、なんとなく心に引っかかった。
まるでミツキさんの苦境を楽しんでるような表情だったから。
私は違和感を覚えたけど、何も言えなかった。
サヤカさんは私の味方で、私一人の力では、ミツキさんを助けることはできないのだから。
「なるほどね。で、あなた、メッセージは送ったの?」
「送ったけど、返事が来ないんです」
「そう。でも、既読はつくのよね?」
「はい」
サヤカさんは少し考える素振りを見せた。でもその考えてる表情も、どこか演技っぽく見えた。
まるで最初から答えを決めてるような感じだった。
「ねえ、これをもっと多くの人に見てもらったらどうかしら」
「え?」
私は困惑した。多くの人に見てもらうって、どういうことだろう。
「だって一人で悩んでても仕方ないでしょ?みんなで考えた方がいいアイデアが出るかもね」
私は迷った。ミツキさんのプライベートなことを、勝手に他の人に話していいものかな。
彼女の同意を得てないのに、本当にいいのかな、って思った。
「でもミツキさんの許可なしに」
「大丈夫よ。助けるためなんだから」
サヤカさんの言葉には正当性があった。
確かに助けるためなら仕方ない。多くの人が知れば、解決策を知ってる人がいるかもしれない。
でも本当にそれでいいんだろうか。
ミツキさんは、この状況を多くの人に知られることを望んでるんだろうか。
「どうやって?」
「簡単よ。SNSで発信するの。『クラスメイトが困ってる』って」
私は不安になった。
「でもそんな大げさに」
「大げさじゃないでしょ?実際に困ってるんだから」
サヤカさんは自分のスマホを指差した。
その画面にはミツキさんのアカウントが表示されてる。
「この画像、すごく印象的じゃない?きっとみんな興味を持つわ」
「ドラマチック?」
私は首をかしげた。印象的という言葉に、なんとなく違和感を覚えた。
これはミツキさんの苦しみなのに、まるで見世物のように扱われてる気がした。
「そう。もっとよく書けば、きっと多くの人が協力してくれるわ」
私は首をかしげた。よく書くって、どういうことだろう。事実をありのままに伝えればいいんじゃないかな。
「例えば『同じクラスの子が異世界に迷い込んでしまいました。みんなで助けませんか』みたいな感じ?」
サヤカさんの提案に、私は戸惑った。
それって事実と違うような気がするからだ。少なくともそこが異世界なんて、決まったわけじゃない。
「でも異世界って決まったわけでは…」
「でもこの画像を見てよ。普通の場所じゃないでしょ?」
確かにミツキさんの画像は現実離れしてる。でもそれを異世界と言い切っていいんだろうか。
でも、確かにサヤカさんの言うことも一理ある。あの画像は、明らかに普通の場所じゃない。もしかしたら本当に異世界のような場所なのかもしれない。
「どう?やってみない?」
サヤカさんの目が、期待に輝いてた。友達も同調するように頷いてる。
私は迷ったけど、結局うなずいた。ミツキさんを助けるためなら、多少の誇張は仕方がないかもしれない。
「分かりました。でも、嘘は書かないほうが…」
「もちろんよ。任せて」
サヤカさんは満足そうに微笑んだ。
でもその笑顔を見てると、なんとなく不安になった。
何かこう…、裏にあるような感じ、というのだろうか?
その日の放課後、私は家で宿題をしてた。
スマホが何度も通知音を立てるので、確認してみると、SNSアプリでたくさんの反応があった。
サヤカさんが何かを投稿したようだ。
サヤカさんが投稿した内容を見て、私は驚いた。
『同じクラスの如月ミツキさんが、謎の世界に迷い込んでしまいました。彼女から送られてくる画像には、この世のものとは思えない美しい場所が!でも、彼女はその世界から帰り方が分からず困ってます。みんなで知恵を出し合って、彼女を助けませんか?』
そして投稿には、ミツキさんのアカウントの画像がいくつかスクリーンショットで添付されてた。あの紫色の空の画像、線路の画像、そして、駅舎の画像。
謎の世界?美しい?
少なくとも、私はそんな風には思えなかった。
確かに画像は不思議だったけど、美しいという表現は適切かな?
それにミツキさんが困っているというより、何か冒険でもしているかのような感じで、何かモヤモヤしたものを感じた。
でも反応はすごかった。コメントがたくさんついてる。
『すごい!本当の話?』
『画像見せて!』
『都市伝説みたい』
『どうやって連絡取ってるの?』
私は慌ててサヤカさんにメッセージを送った。
『ちょっと、事実と違うような気がするんですが』
すぐに返事が来た。
『大丈夫よ。みんな興味を持ってくれてるじゃない。これでミツキさんを助けられるわ』
私は不安だったけど、確かにたくさんの人が関心を示してくれてる。
もしかして、この中に解決策を知ってる人がいるかもしれない。そう思うと、少し希望が湧いてきた。
その時、ミツキさんから新しい投稿があった。
今度は真っ暗な通路の画像。かすかに明かりが見えるけど、とても不気味だった。
まるで地下道のような場所だけど、普通の地下道とは明らかに違う。壁の質感や天井の高さが、現実のものとは思えない。
通路の奥に、ぼんやりとした光が見える。
でもその光は普通の電灯じゃないようだった。まるで蛍光色のような、不自然な青白い光だった。
『誰かいませんか。一人は怖いです』
その文章を読んで、私の胸が痛くなった。ミツキさんは本当に怖がってる。
一刻も早く助けてあげたい。そのためなら、多少の誇張も仕方がないのかもしれない。
私はサヤカさんに新しい投稿があったことを伝えた。すぐに返事が来た。
『見たわ!これは完璧じゃない!もっと話題になるわ』
話題になる?
私はちょっと違和感を覚えた。
私たちの目的は、ミツキさんを助けることのはず。話題になることが目的じゃないのだ。
しかし、確かにサヤカさんが言うように話題になれば、より多くの人が協力してくれるかもしれない。
だとすれば、それは悪いことじゃないよね。
そのように、私は自分に言い聞かせて、サヤカさんの行動を信じることにした。
夜遅くまで、私はミツキさんの投稿を見続けてた。
どの画像も現実離れしてて、まるで別の世界のもののようだ。でも彼女のメッセージからは、確実に恐怖と孤独感が伝わってきた。