絆の光は未来へ

光希side

内診室のドアが閉まった後、光希は一人診察室に残った。手袋を外し、手を洗いながら、彼の心の中では複雑な想いが渦巻いていた。

医師として、診察は完璧に行えた。
あゆかの体調に異常はなく、定期的な経過観察として必要な検査も滞りなく終了した。
データも正常値を示していた。

しかし、光希の胸の奥では、別の感情が静かに燃えていた。
あゆかの緊張した表情、診察台で震える身体、そして必死に平静を保とうとする彼女の姿を見ているとき、光希は医師としての冷静さを保つのに、想像以上の精神力を要した。

（彼女がこんなに辛い思いをしているのに、俺は医師として淡々と…）
自分の選択が正しかったのか、光希は自問した。医師になることで、あゆかを守れると信じていた。

しかし、今、目の前で彼女が羞恥と不安に震えているのを見ると、果たして自分が彼女にとって最良の主治医なのか、疑問が湧いてくる。

それでも、光希には確信があった。他の誰よりも、自分があゆかのことを大切に思っている。他の医師に彼女を任せることなど、考えられない。

診察中、あゆかの身体に触れるたび、光希は自分の心を律しなければならなかった。医師としての技術に集中し、一切の私情を挟まない。それは彼にとって、想像以上に困難なことだった。
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