絆の光は未来へ
しかし、だからこそ、光希は完璧な診察を提供できたのだと、自分に言い聞かせる。

あゆかへの想いが、医師としての責任感を、より一層強いものにしていた。
カルテに記録を打ち込みながら、光希は静かに呼吸を整えた。間もなく、あゆかが診察室に戻ってくる。

今度は、医師として冷静に、検査結果について説明しなければならない。

そして、彼女の不安を少しでも和らげてあげたい。それが、医師として、そして幼馴染みとしての、光希の願いだった。

しかし、彼女が診察台に横たわる姿が、瞼の裏に焼き付いている。そして、彼の指先が感じ取った、微かな粘膜の荒れ。それは、彼女の「いつも通り」という言葉の裏に隠された、小さな真実だった。

患者がデリケートな症状を口にしづらいのはよくあることだ。特に産婦人科では、羞恥心や不安から、正確な病状を伝えられないケースは少なくない。

医師として、彼はそうした患者の心理を理解し、言葉にならないサインを読み取る訓練を積んできた。

だが、あゆかの場合、その感情の機微は、ただの「患者」と「医師」という関係性だけでは説明できないものだった。

彼女は幼い頃から、どんなに辛い時でも、決して弱音を吐かない子だった。痛みも、不安も、笑顔の裏に隠してしまう。
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