絆の光は未来へ
ある日、光希はあゆかの病室を訪れた。その手には、カルテと、いくつかの資料が握られている。
「あゆか、少し時間いいか?君の今後のことについて、話しておきたい」
光希の真剣な顔に、あゆかは居住まいを正した。リハビリの進捗は順調だが、やはり今後のこととなると、緊張する。
「うん」
光希はベッドサイドの椅子に座り、資料を広げた。
「君の高次脳機能障害は、以前に比べて格段に改善している。記憶力も注意力も上がっているし、新しいことを学ぶ意欲も高い。運動機能も、歩行は安定してきたし、日常生活を送る上での大きな支障はほとんどなくなってきた」
光希の言葉に、あゆかは安堵の息を漏らした。だが、光希の表情はまだ真剣なままだ。
「ただ、細かな手指の巧緻性、例えば、小さな部品を組み立てたり、注射器の針を扱うといった作業には、まだ練習が必要だ。
これは、看護師になる上で重要な部分だから、引き続きリハビリで重点的に取り組んでほしい。そして、長時間の集中や複雑な判断を要する場面では、疲労感が出やすいという傾向もまだ残っている。これは、病気の後遺症として、どうしても残る可能性のある部分だ」
光希は、あゆかの目を見つめる。
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