絆の光は未来へ
「そして、細かな手指の巧緻性についても、引き続きリハビリが必要だ。日常生活では問題なくても、医療行為においてはわずかな震えや動きのぎこちなさが、重大なミスに繋がりかねない。この点は重点的に練習することになるだろう。焦る必要はないから焦らず、地道に取り組んでいこう」

さらに、光希は最も懸念している点に触れた。

「そして、婦人科系の病気だ。これは現在、安定しているが、脳炎との関連性が完全に否定されたわけではない。ストレスや過労が、再発の引き金になる可能性もゼロではない。だから、体調管理は、何よりも優先してほしい。定期的な検査は必須だし、何かいつもと違うと感じたら、どんな些細なことでも俺に話してくれ。隣にいるんだから、遠慮はいらない」

光希の言葉は、あゆかの回復を喜びつつも、決して楽観視していないことを示していた。それは、彼女の未来を守るための、医師としての責任感からくるものだった。

あゆかは、真剣な表情で光希の話を聞いていた。時折、不安そうな色を浮かべるが、光希が優しく目を合わせると、決意の光が戻ってくる。

「うん、分かった。全部守る様に努力する。光希が、私の一番の主治医だから」

あゆかの言葉に、光希は安堵したように微笑んだ。この先も、二人で協力し、困難を乗り越えていく覚悟を、改めて共有した瞬間だった。
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