絆の光は未来へ
だが、それ以上に辛かったのは、自分を売った記憶だった。夜中に目を覚ましては、あの時の感触が蘇る。

シャワーを何度浴びても消えない、心の汚れ。医学を学びながら、自分の体を商品として扱った矛盾。

「田中美智子さん、どうぞ」

看護師の声で現実に引き戻される。扉が開き、当時より年を重ね、質素な服装に身を包んだ彼女が入ってきた。

「先生…?」

お互いに気づいた瞬間の気まずい沈黙。医師と患者という立場の逆転。そして、婦人科という最もデリケートな診療科での再会。

「不正出血が続いていて…」

彼女の声は震えていた。俺に診察されることへの羞恥心なのか、それとも過去への後ろめたさなのか。

問診を続けながら、俺の心は複雑に揺れていた。医師として冷静に対応すべきだと理性では分かっている。しかし、感情は簡単には整理できない。

(今度は俺が、お前の体を診る番だ)

そんな醜い考えが頭をよぎり、自分自身に嫌悪感を覚えた。医師がこんなことを考えてはいけない。

内診が必要だった。女性看護師を呼び、できるだけ彼女の尊厳に配慮して進める。

しかし、診察台に横たわる彼女を見た時、あの夜の記憶が鮮明に蘇った。
< 177 / 284 >

この作品をシェア

pagetop