絆の光は未来へ
県立中央病院のICUでは、あゆかが深い眠りの中にいた。人工呼吸器の規則正しい駆動音と、生命維持装置のモニターから響く機械的な電子音だけが、部屋の静寂を破る。

あゆかの顔は、わずかに蒼白く、まるで蝋人形のようだった。細い腕には点滴のルートが複数つながれ、腕の皮膚の下を、透明な輸液がゆっくりと流れ落ちていく。

胸元には心電図の電極が貼られ、小さな画面には彼女の心拍が波形となって刻まれていた。かすかに乱れた前髪が、その白い肌に張り付いている。

シーツに覆われた身体は、一見すると安らかに見える。しかし、彼女の呼吸は、自力ではなく機械によって支えられており、その脆弱な生命のきらめきは、無数のチューブとコードによってかろうじて維持されていた。

代理の担当医である一ノ瀬蓮は、数時間前にもあゆかの容態を確認し、現在は産婦人科で別の患者の処置にあたっていた。

光希からの着信には気づいていない。ICUの看護師たちは、定期的にモニターの数値をチェックし、僅かな変化も見逃さないよう、鋭い視線を巡らせている。

あゆかの周りは、無機質な医療機器と、張り詰めた空気で満たされている。しかし、そのすべてが、彼女の命を繋ぎとめるために機能していた。光希が、あゆかの元へと必死に駆けつけている間も、時間は容赦なく流れていく。彼女の身体は、その小さな生命力で、懸命に戦い続けていた。
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