絆の光は未来へ
彼の声は掠れ、瞳は血走っていた。理性を失った獣のように、彼はただ前へ進もうとする。

しかし、蓮もまた、全身で光希の動きを封じようと必死だった。感情に突き動かされ、無意識に冷静な判断を失っている親友を、この厳重なICUという場で、止める義務が自分にはあった。

「落ち着け、光希!分かっている!だが、ここはICUだ!勝手な行動は許されない!」

蓮の声にも、焦りが滲んでいた。周囲の看護師たちが、二人の異様なやり取りにちらちらと視線を向ける。緊迫した空気の中、光希の意識は、蓮の制止を振り切り、今すぐにでもあゆかの手を握りたがっていた。

「光希!聞け!ここで感情的に動いても、あゆかは救えない!お前が今、冷静にならなければ、何も始まらないんだ!」

蓮の声が、光希の耳に突き刺さった。それは、単なる制止の言葉ではなかった。医師としての、そして親友としての、蓮の強い意思が込められていた。光希の血走った瞳の奥に、わずかな動揺が走る。

蓮は、光希の腕を強く掴み直し、半ば引きずるように、ICUの端にあるカンファレンススペースへと向かおうとした。

「まずは、状況を聞け。話は、その後にいくらでもできる!」

蓮の言葉に、光希は反射的に身体の抵抗を緩めた。その蓮の言葉は、彼の奥底に眠っていた医師としての理性にかろうじて届いたのだ。まだ感情は荒れ狂っていたが、蓮の切迫した、しかし冷静な視線が、彼に「聞くべきこと」を思い出させた。

光希は、蓮に腕を引かれるまま、あゆかのベッドから視線を外した。彼の顔は蒼白なままだったが、その目は、わずかに、現実を捉え始めていた。
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