絆の光は未来へ
「工藤先生」

声が聞こえ、顔を上げると、そこにいたのはICU担当医の高橋だった。高橋は、光希の憔悴しきった顔を見て、眉をひそめた。

「工藤先生、あなたの気持ちは痛いほど分かります。ですが、これでは体が持ちません。外来は他の医師に任せなさいとの藤沢先生からの伝言です。あなたは、今はあゆかさんのそばにいて、彼女の病気の原因究明に全力を注いでください。それが、あなたにしかできない、最も重要な役割です」

高橋の言葉は、光希への配慮と、彼のプロ意識を慮ってのものだった。光希は、ぐっと唇を噛みしめる。

こんな状況で、自分の精神状態が治療に影響を及ぼすことなど、決してあってはならない。

「……はい。申し訳ありません。ご配慮、感謝いたします」

今まで頑なだった何かを壊される様な変化を感じた。

光希は、絞り出すように答えた。蓮だけでなく、担当医である高橋からも休むよう促されている。これ以上無理をしても、あゆかのためにならないことは分かっていた。

そして、強制的にではないものの、半ば促される形で、光希は数時間の休息を取ることを決めた。

この状況では、感情的になるばかりで冷静な判断ができない。ただ、あゆかの命を救うために、今は自分の体を休めることこそが最善なのだと、自分に言い聞かせた。
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