絆の光は未来へ
「どうしてだ……治療はうまくいっているはずなのに」
光希は、モニターの数値を見つめながら焦燥感を募らせた。文献通りの治療を行っているはずなのに、なぜあゆかの体に変化がないのか。
「工藤先生、佐々川さんの免疫システムは、一般的な自己免疫疾患の患者さんとは異なる反応を示しているようです。薬剤への反応が、予想よりも鈍い」
ICUの担当医が、眉を寄せながら告げた。特殊な血液検査の結果も、決定的な手がかりにはならず、病態は依然として複雑だった。
「では、どうすれば……」
光希の声が震える。これまで見えていた希望の光が、再び薄闇の中に吸い込まれていくような絶望感に襲われた。
専門医も、この膠着状態には首を傾げていた。治療法が確立されていない稀な疾患ゆえに、定石通りのアプローチでは限界があるのかもしれない。
光希は、あゆかの手を握りしめた。冷たい指先が、彼の不安をさらに煽る。
「あゆか……負けるな。俺は諦めない。どんな手を使っても、お前を助けてみせる」
彼の心は、再び手探りの暗闇に引き戻された。しかし、その瞳の奥には、どんな困難にも屈しない、医師としての、そして一人の人間としての不屈の闘志が燃え盛っていた。
< 74 / 284 >

この作品をシェア

pagetop