絆の光は未来へ

意識の回復

光希は、その日の夜も、あゆかのベッドサイドに座っていた。疲れ果てた顔に、しかし希望の光を宿し、あゆかの手を握りしめている。

新しい治療が始まることで、一歩前進した安堵感はあった。しかし、同時に、まだ予断を許さない状況であることも理解していた。抗NMDA受容体抗体脳炎は確かに治療法が確立されているが、患者によって反応は様々で、完全な回復までには長い時間を要することも少なくない。

人工呼吸器の規則的な音が響く中、光希はあゆかの左手の薬指にシンプルなシルバーリングをそっとはめた。
光希もリングにありの手を触れさせながら自分の指にリングを付ける。

それは、まるで二人の絆を示すかのように、静かに輝いていた。

この指輪は、光希が研修医時代にあゆかに内緒で貯めたわずかな給料で買ったペアリングだった。プロポーズの準備として密かに用意していたものだったが、あゆかの病気でその機会を逸していた。でも今、この瞬間こそが、彼にとって最も大切な時だと感じた。

「あゆか……」

光希は、彼女の両手を自分の手で優しく包み込んだ。そして、その指輪にそっと触れる。

「あゆか、目を覚ましたら、俺と結婚してほしい」

彼の声は、誰に聞かせるでもない、あゆかへの純粋な願いだった。医師として、恋人として、そして一人の男として、光希は自分の全てをかけてあゆかを守りたいと思った。

その時だった。
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