婚約破棄されましたが、聖女様ごとまとめてざまぁさせていただきます ~平凡令嬢、イケメン魔導師に拾われ溺愛される~
「詳しいことは後で。じゃっ!」

そう言って、ルディエル様は笑顔のまま軽やかに背を向けてしまった。

「えっ……」

あっけにとられた私は、その場に立ち尽くすしかなかった。

私の唇から、思わず声が漏れる。

「ルディエル様~……」

なんで今の私に話してくれないの?

どうして、私だけが取り残されたような気分になるの?

胸の奥に小さな不安が芽を出したけれど、私は必死に打ち消した。

ルディエル様に限って、そんなはずがない――私とルディエル様の仲なのに。

ほんの些細なことさえ、今の私には大ごとのように思えて、ぐるぐると考えが回る。

でも……このときの私は、きっと本当に、夢見る少女だったのだと思う。

あの方と結婚できる、それだけで世界が光り輝いて見えていた。

婚約者という立場が、どれほど不確かで、どれほど脆いものか――

その現実に、私はまだ、気づいていなかった。
< 3 / 16 >

この作品をシェア

pagetop