婚約破棄されましたが、聖女様ごとまとめてざまぁさせていただきます ~平凡令嬢、イケメン魔導師に拾われ溺愛される~
「悪い、ノエルナ。他に、私に相応しい人ができたのだ」

――何を言っているの?

「相応しい……?」

私は公爵家の娘で、幼い頃から礼儀も学問も仕込まれてきた。

何より、誰よりもルディエル様を敬い、愛してきたつもりだった。

その私より“相応しい”人なんて、いるはずがない。

「紹介しよう。シェレナ・ミルヴィス嬢だ」

ルディエル様がそう言った瞬間、陰から一人の女性が姿を現した。

ふわりと揺れる薄いピンクのドレスに、金の髪飾り。着飾ってはいたけれど、私の記憶にはまったくない顔だった。

「……はあ?」

思わず素の声が出た。

誰、それ。

スクールにいた? こんな派手な格好をする人、見た覚えもない。

もしかして、よっぽど地味で影の薄い人だったのかしら?

そんな人が、どうして今さら、王太子の隣に――

胸の奥に、得体の知れない冷たいものが渦巻き始めていた。
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