婚約破棄されましたが、聖女様ごとまとめてざまぁさせていただきます ～平凡令嬢、イケメン魔導師に拾われ溺愛される～

「はじめまして。シェレナと申します。皆さん、宜しくお願い致します」

可愛らしくて、どこか甘ったるい声。

いかにも、男性が好みそうな“女の子”という感じだった。

けれど、私は冷静さを保つように、丁寧な笑みを浮かべて問いかける。

「失礼ですが……どちらのご令嬢でしょうか？」

そう、こんな得体の知れない女性が、王太子妃になれるはずがない。

「どちらの？」と、彼女は首を傾げる。

「ええ。公爵家ですか？　それとも伯爵家？」

貴族であるなら、それ相応の立場が必要なはずだ。

だが彼女は、まるで何でもないことのように笑って言った。

「いえ、父は一般人ですわ」

「……は？」

一瞬、何を言われたのか分からず、思考が止まった。

私の口が、ぽかんと開いたまま固まってしまう。

い、い、一般人……？

開いた口がふさがらないとは、まさにこのことだった。

――そんな馬の骨が、どうして王太子の隣に立っているの！？