深夜13時の夜行バス

「「悲恋坂??」」
またも塩原と弓削くんが奇妙な顔を作って私を見てきた。

「また縁起が悪い。だって不倫カップルの心中場所だろ?前川のアイデアはいい線行ってると思ったけど、何だかなぁ…」
塩原はこめかみを掻く。

「まぁ縁起はよくないよね。でもさ、考えたんだけどさ……て言うかこれは完全に自己満足だけど、その二人の写真を見つけ出してお店に飾ってあげられないかな。
不倫て言うと今はお気軽な感じで、しょっちゅう芸能人とかフォーカスされてるけど、でも当時の不倫て生半可な物じゃ無かった気がする。添え遂げられないと分かってたから二人は死んじゃったんじゃないかな。
100年も経っちっゃったけど、二人が写真越しでもいいから会えたら……」
私の声はどんどん小さくなった。

本当に自己満足の世界だ。言ってることもむちゃくちゃだし。

しかも通るかも分からない企画。だけど通る通らない前の話に二人の同意が必要だ。
けれどプレゼンをしてもこの悲恋坂で死んだ二人の男女のことは言わないつもりだ。私たちだけで二人の願いを叶えてあげたい。

「よし!その案乗った!」と最初に立ち上がったのは塩原だった。
「いいッスね!そうゆうの!時を超えた再会。ロマンチックじゃないすか」と弓削くんもわくわくと目を輝かせている。
「まだ企画通ってないけどね」
「通るってぜってぇ!」と塩原はどこか自慢げだ。

「そうっすよ!開発事業部と外食事業部の連中にあっと言わせてやりましょう!」
「二人ともありがと。じゃぁまずプレゼンの為の資料集めや企画書作り開始ね」
「頑張りましょう!」

こうして私たちの企画は何とかまとまった。
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