野いちご源氏物語 二五 蛍(ほたる)
内大臣(ないだいじん)様はあちこちに男のお子がたくさんいらっしゃる。
それぞれにふさわしいご出世をさせていらっしゃった。
でも、姫君(ひめぎみ)は少ない。
一番期待なさっていた弘徽殿(こきでん)女御(にょうご)様は中宮(ちゅうぐう)になれず、雲居(くもい)(かり)源氏(げんじ)(きみ)若君(わかぎみ)相思(そうし)相愛(そうあい)で、東宮(とうぐう)様とご結婚させられるか難しいところ。
貴族社会では息子よりも娘の出世が重要、というか娘が出世すれば息子も孫も出世できるわけだから、(くや)しくお思いになっていたわ。

そこでふと、夕顔(ゆうがお)(きみ)がお生みになった姫君のことを思い出された。
<あの姫はどうしているだろう。気の弱い母親がどこかへ連れていってしまって、かわいらしい子だったのに行方(ゆくえ)()れずになったのだ。娘というのは絶対に目を離してはいけないと思い知らされた。どこかで落ちぶれて私の子だと言いふらしていないだろうか。それも恥ずかしいが、名乗り出てくれれば世話をするのに>

まさか源氏(げんじ)(きみ)に引き取られて六条(ろくじょう)(いん)でお世話されているなんてお思いにならない。
子息(しそく)にもおっしゃる。
「もし私の娘だと言っている人がいれば、私に知らせなさい。若いころにはいろいろな女性と関係を持ったが、その娘の母親は特別な人だった。つまらないことで悩んで姿を消してしまったのだ。貴重な姫をひとり失ったままでは残念で仕方がない」

これまでは忘れていらっしゃったのに、姫君おふたりが理想どおりにいかず、源氏の君などが姫君を大切に世話していらっしゃるのもうらやましくて、そうお思いになったようね。
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